老朽化した農業用ため池の廃止工事を巡り、全国23カ所で排水時に下流域で水があふれる被害が生じる恐れがあることが18日、会計検査院の調べで分かった。実際の被害は確認されていないが、検査院は農林水産省に改善を求めた。
 老朽化して利用見込みのないため池は、堤の決壊による水害などを防ぐために廃止工事が実施されている。廃止工事では堤を切り開いて新たに水路を設け、下流側にある既設の水路まで接続して排水する工法が採られている。
 検査院は2021~24年度までに実施された全国198カ所の廃止工事を調べた。その結果、福島、兵庫、島根、岡山、山口各県にある14市町村が管理する23カ所で、新設した水路を流れる水量が、下流にある既存水路の最大流量を上回り、安全に排水できない設計になっていたことが判明した。
 検査院によると、農水省は都道府県側に対し、工事の実施時に安全な排水ができるかの具体的な確認方法などを示していなかったという。
 農水省は検査院の指摘を受け、都道府県側に対し、必要に応じて既設水路の拡幅など安全に排水できる対策を講じるよう周知した。 
〔写真説明〕会計検査院(写真上)と農林水産省の看板

(ニュース提供元:時事通信社)