自民党総裁選(10月4日投開票)では、人口減少が進む中での地方創生や、激甚化する自然災害への備えも論点となる。いずれも石破政権が看板政策に掲げたテーマで、各候補は成長産業や若者の地方定着などを訴え、2026年度中を予定する防災庁設置への異論も聞かれない。ただ、議論は低調で、地方側からは現政権と比べ政策の優先順位が下がることへの懸念も聞かれる。
 地方創生を巡り政府は6月、今後10年間で取り組む施策をまとめた「基本構想」を策定。東京一極集中の是正に向け、地方での雇用拡大や、居住地以外の地域に継続的に関わる「関係人口」の増加などを掲げた。
 各候補とも現政権の進める方向性と大筋で一致しており、林芳正官房長官は、関係人口の拡大など基本構想の内容を公約に盛り込んだ。小林鷹之元経済安全保障担当相、茂木敏充前幹事長、小泉進次郎農林水産相の3氏は、半導体などの成長産業や研究機関の地方立地を提唱。高市早苗前経済安保相も「産業クラスターの形成」を訴え、雇用の創出を通じた若年層の地方定着を狙う。
 防災庁に関しては、自治体から地方拠点の設置要望が相次ぐなど関心や期待度が高い。各候補も前向きで、現職閣僚の林氏と小泉氏は防災庁の設置を政策集に明記した。
 前回の総裁選で、「指揮命令系統が重複する」などの理由で不要としていた小林氏は、「今は(指揮系統が)明確になっているので、政府の構想に問題はない」と設置を進める立場に転じた。「イメージが湧かない」と異論を唱えていた高市氏も、「既に動きだしているもの。否定するつもりはない」との姿勢だ。茂木氏は国土強靱(きょうじん)化の推進を掲げた。
 衆参で少数与党となっている自民党にとって、連立の枠組み拡大を見据えた論点もある。東京一極集中の是正や災害時の首都機能のバックアップに向けて日本維新の会が掲げる「副首都」構想について、林氏は「必要性は非常に大きい」との考えを示したほか、小泉氏も前向きな姿勢を見せている。高市氏も「首都機能のバックアップ体制構築」を盛り込んだ。
 ただ、候補者討論会や演説会では地方創生や防災に触れる機会は乏しい。首長からは「(石破茂首相の退陣で)流れが止まり、変わることがないよう期待したい」(滋賀県の三日月大造知事)といった声が出ている。 
〔写真説明〕防災庁設置準備室の看板を掛ける石破茂首相(左)と赤沢亮正担当相=2024年11月1日、東京都千代田区

(ニュース提供元:時事通信社)