【ロンドン時事】英国のスターマー政権が、欧州連合(EU)への再接近を加速させている。対イラン強硬姿勢や保護貿易などで国際秩序を瓦解(がかい)させるトランプ米大統領と距離を置き、経済と安全保障の両面でEUとの結び付きを重視。EUの規制を英国も採用できるようにする新法案を策定中だ。英EU離脱(ブレグジット)から6年たち、協調路線に回帰しつつある。
 EUとの緊密化が英国にもたらす利益は「無視できないほど大きい」。スターマー首相は13日に議会でこう明言した。関係再構築の足掛かりにするのが、簡単な英議会手続きでEU新規則を取り込める「ダイナミック・アラインメント(動的整合)」と呼ばれる枠組みだ。英メディアによると、政府は5月の国王演説で、同枠組みを盛り込んだ新法案を正式に発表する。
 労働党のスターマー氏は2024年に14年ぶりの政権交代で首相に就任。EU離脱を主導した保守党の政策を転換する姿勢を鮮明にしてきた。英EU首脳は25年5月、ブレグジット以降初めて会談。その目玉が「規制再統合」だった。
 規制再統合の第1弾は、食品安全基準と炭素課税、電力の3分野が有力だ。英メディアによると、英EU首脳は年央にも再会談する予定で、英側は動植物を外来の病気から守る衛生植物検疫(SPS)や、炭素市場を連携させる排出量取引制度(ETS)の協定締結を目指す。
 背景には、英経済の減速と世論の変化がある。予算責任局は2年前、EU残留時と比べて国内総生産(GDP)が約4%押し下げられたと試算。直近で下げ幅が8%程度になったとの見方もある。調査会社ユーガブの2月調査では、国民の過半数が「EU再加盟を支持する」と回答した。
 「過去ではなく未来を見るべきだ」。スターマー氏はEUへ復帰せずに「英の主権」を守りつつ、経済復活をにらんでEUと規制をそろえる実利を優先する。ただ、規制再統合が成長力に直結するかは見通せない。協調路線に転換しても首相支持率の低迷から脱せず、再接近の前途は多難だ。 
〔写真説明〕17日、記者会見で発言するスターマー英首相=仏パリ(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)