【サンパウロ時事】南米ベネズエラで起きたマグニチュード(M)7超の連続地震は、24日で発生から1カ月になる。判明した犠牲者は5278人に上り、約2万3000人が避難生活を続ける。政府の対応の拙さに市民は憤りを隠さず、長期独裁政権の負の遺産を引き継いだ暫定政府の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになっている。
 行方不明者数はいまだ非公表で、被害の全容も不明だ。死者は数万人に達するとの見方もある。政府は被災者用の住宅建設を進めるなど復旧に注力する姿勢を打ち出すが、市民は支援不足などに不満を高めている。
 ◇「すべてあなたのせい」
 「私は台所を失っただけじゃない、娘を亡くした。すべてあなたのせい」。7月上旬、最大の被災地北部ラグアイラ州を訪れたマドゥロ大統領の息子で国会議員のゲラ氏に、女性が涙ながらに叫んだ。
 ノルウェーのテレビ局「TV2」によると、女性はダメリ・ディアスさん。政府の住宅政策で建設された家は地震で大きく損壊。6歳の娘は地震の4日後、がれきの中から遺体で見つかった。自宅近くで取材を受けていたところ、ゲラ氏を乗せた車が現れ、女性は怒りを抑えられなかった。
 ゲラ氏の警護官は、女性が詰め寄る様子を写すTV2の撮影を止めようとしたが、周囲の住民が阻んだ。「これを撮って!」。ゲラ氏を「この野郎」と罵倒する人もいた。
 ◇異例の抗議活動
 ディアスさんの様子を捉えた動画は、当局に対する市民の怒りを示すものとして、国内外で拡散した。発災当初の救助の遅れに加え、政府の情報統制も不満の種になっている。
 市民が政府関係者を公然と批判するのは、今年1月に強権的なマドゥロ氏が米国に連行されるまでほぼ見られなかった。25年以上続いた独裁政権下では、抗議活動に参加した市民は弾圧の対象となり、暴力や拘束を受けた。
 ベネズエラ中央大のミルナ・ヨニス教授(国際関係)は「地震によって、国民は政府の能力をより疑問視するようになった。人々は声を上げ始めた。これまでは考えられなかったことが起きている」と分析した。
 ◇先が見えない不安
 被災者は依然、厳しい生活を強いられている。屋外でテント生活を続ける人も多く、心身への影響が懸念される。
 日本の国際緊急援助隊・医療チーム1次隊の土生川正篤団長は、被害の大きかった地域では「清潔な水やトイレが不足している」と強調。どこの病院にも長蛇の列があり、患者の数に対応しきれていないと訴えた。
 また、被災者は今の生活がいつまで続くのか「先が見えない状態が続いている」と説明。今後は「避難生活の疲れや、地震によりトラウマ(心の傷)を抱えた人のケアが必要になる」と話した。
 国連は地震の被害額について、建物やインフラ被害だけで370億ドル(約6兆円)に上ると推計。180万人が人道支援を必要とすると見込んでおり、各国に支援を呼び掛けている。 
〔写真説明〕仮設病院でベネズエラ地震の被災者支援に当たる日本人ボランティア医師ら=13日、北部ラグアイラ州カラバジェダ(EPA時事)
〔写真説明〕ベネズエラ地震で損壊した建物の周囲で避難生活を送る被災者ら=9日、カラカス(EPA時事)
〔写真説明〕ミルナ・ヨニス ベネズエラ中央大教授(本人提供・時事)

(ニュース提供元:時事通信社)