再春館 ヒルトップ全景(写真提供:再春館製薬所)

株式会社再春館製薬所(熊本県上益城郡益城町)は8月4日、「令和8年熊本地震」(7月28日発生)の被災者支援活動を開始したと発表した。被災した母子世帯への社員寮の無償開放や、医療・福祉機関への災害備蓄物資の提供を進めている。

同社は発災直後から「まずは社員と家族を守ること」を最優先に対応。その上で、「大切なお客様、協力会社様、地元熊本のために」という基本方針のもと事業継続を図り、発生から2日後の7月30日に顧客窓口および自社製造工場での製造・発送業務を全面的に通常再開したとしている。

再春館製薬所は2016年の熊本地震でも震源地・益城町に本社を構え、自社施設や社員が大きな被害を受けながら復旧と地域支援に取り組んだ。

リスク対策.comが当時行った取材に対し、同社では「社員とその家族の生活を守る」「お客様へのサービスを一刻も早く再開する」「地元である益城町・熊本への応援」の3本柱のもと、社員支援と事業復旧、地域支援を同時並行で進めた経緯を説明している(https://www.risktaisaku.com/articles/-/1953)。

医療・福祉機関へ備蓄物資を提供

今回の地震では、同社は7月31日に被災地域で医療・介護活動を継続する桜十字グループの物資集積拠点(熊本市南区)へ、自社備蓄物資を直接輸送・提供した。提供した物資は、フェイスタオル832枚、生理用品7280枚、簡易トイレ1000回分、幼児用おむつ(Lサイズ)528枚。

8月1日からは、地震により自宅が被災した、小学生以下の子どもを持つ母子世帯を対象に、熊本市中央区にある社員寮の無償開放を開始した。避難所生活を送る家族に、少しでも心が安らぐ環境で過ごしてほしいという思いからだという。なお、社員寮の防犯・プライバシー保護の観点から、対象を母子世帯に限定している。利用期間はまず1カ月を目安とし、被災状況や自治体による仮設住宅等の整備状況に応じて、期間の延長や生活再建の相談にも個別に対応する。家賃や水道光熱費、駐車場代は完全無料で、エアコンや基礎家具、家電を備えた1K個室を提供する。「り災証明書」が未発行の場合でも、被災状況が分かる写真等があれば申し込み可能としている。

2016年の熊本地震でも、同社は被災した社員向けに会社施設を開放し、住宅被害を受けた社員へ社員寮の提供や住居確保支援を実施していた。安否確認だけでなく、家族一人ひとりの状況や生活上の課題まで丁寧に聞き取りながら支援策を講じたことが特徴だった。

「企業の早期再開が地域の安心につながる」

代表取締役社長の西川正明氏は、「私たちは10年前、被災した当事者として、地域社会を支える民間企業が迅速に事業を再開し、雇用と経済を守り続けることがいかに地域社会の安心につながるか、身をもって学びました」とコメント。

その経験をふまえ、今回の発災においても地元・熊本の経済を回していくことに直結するという信念のもと、通常営業・製造を再開したとし、「熊本に生まれ、育てていただいた企業として、地元の方々が一日も早く日常を取り戻していただけるよう、全社一丸となって支援と復興に取り組んでまいります」としている。

2016年の熊本地震では、本震後に営業を一時休止したものの、社員と家族の安全確保を最優先にしながら復旧を進め、コールセンターは4月25日に再開、生産体制もゴールデンウイーク明けまでに全面復旧した。

10年かけて築いた「人本主義BCP」

再春館製薬所によると、今回の地震対応では、2016年の熊本地震での被災体験をもとに構築してきた「人本主義に基づくBCP(事業継続計画)モデル」が機能したという。

同社は前回の震災を機に有事対策マニュアルの策定や安否確認体制の構築を進めたほか、「社員を守ることが事業継続につながる」という考え方を強化してきた。震災時には社員支援と事業継続、さらには地域支援を同時に進める姿勢が特徴であり、今回の対応もその延長線上にあるといえそうだ。