役に立つ国交省のチェックシート

そうした中で、国内にも実務に使える資料がある。国土交通省の「業務継続のための官庁施設の機能確保に関する指針」(2016年10月14日改定)だ。官庁施設向けの文書だが、公開されている「発災時チェックシート」は民間施設でも十分応用できる。このチェックシートの構造体等のⅠ次点検には、「一見して危険と感じるか」という項目の中に、火災の発生、煙、そして「ガスのにおいがする」という確認項目が明記されている。そして、これらに該当した場合の対処は明確に「建物を退去」と記されている。構造被害の有無を確認する前の、最初の入口でガス漏れをチェックさせる設計になっている。

国土交通省資料より

注目すべきは、退去の先まで規定していることだ。「建物を退去」と判断された場合は、館内放送等で対処を指示し、職員及び在庁者の全てが退去したことを確認した後、「建物を封鎖する」と明記されている。さらに、ガスへの言及はⅠ次点検だけではない。執務室等を点検するⅡ次点検にも「ガスのにおいがする」という項目があり、その場合の対処として「ガス供給を遮断する。当該エリアへの立ち入りを禁止し、窓やドアを開けて換気を行う」ことと、設備の詳細点検(Ⅲ次点検)への移行が定められている。構造体の点検項目にも、燃料漏れ等の異常があればガス・油・水の供給を遮断するという規定がある。発災直後は一律に退去し、その後の段階では遮断・立入禁止・換気と、フェーズに応じた対処を示す設計だ。

ただし、このシートも万能ではない。判断の入口が「においを感知できるか」に依存しており、着臭されていないガスや、人が立ち入らない区画での漏えいには対応できない。だからこそ本質的に重要なのは、ガス漏れが発生した際に警報器や緊急遮断装置が確実に作動する状態を平時から維持しておくことである。ガス警報器やガス漏れ検知システムの設置と保守は、施設管理者とガス事業者が責任を持って担うべき領域だ。その際、空気より重いLPガスでは床面近くに、空気より軽い都市ガスでは天井近くにというように、ガスの種類に応じた適切な位置に警報器を設置する必要があることにも留意したい。