2026/08/06
令和8年熊本地震
誰が、どう判断する? 問われる企業の責任
日本の建築法制は、構造安全、すなわち「建物が倒壊しないことで命を守る」ことに主眼を置いて発展してきた。その成果は疑いようがない。しかし今回の事故が突きつけたのは、倒れなかった建物の中にも命を奪う危険が潜んでいるという事実だ。
天井や照明などの非構造部材、そしてガス・電気・給排水といった設備を、発災後にどう点検・評価し、安全に「使い続けられる」状態を確保するか。再入場の判断手順を、ガス漏れ確認を含めて自社のBCPに書き込んでおくこと。それが、今回の犠牲を無駄にしないために、すべての施設管理者と企業に求められている。
あわせて企業が見直すべきなのは、その判断を「誰に」委ねているかである。繰り返しになるが、発災直後の再入場の可否は、法律でも行政でもなく、現場の施設管理者や防災担当者が判断せざるを得ない。ところが多くの企業では、この役割が「総務部門の所管だから」といった組織図上の理由で、いわば充て職として割り当てられているのが実態ではないだろうか。消防法上の防火管理者を選任している施設でも、その法定業務は火災予防を中心としたものであり、地震後にガス漏れの危険を評価し、従業員や来館者の再入場を止める判断について訓練を受けているとは限らない。人命に関わる判断を委ねる以上、企業は、その担当者に判断の根拠となる能力を身につけさせ、「戻さない」と言える明確な権限を与え、訓練の機会を確保しなければならない。休日や夜間など担当者が不在の時間帯に誰が判断するのか、代行順位まで決めておくことも欠かせない。肩書きの選任だけで満足せず、権限・基準・訓練・代行体制をセットで整えて初めて「委ねている」と言えるのである。
同時に今回の爆発では、漏えいの検知や警報の仕組みが機能し得る状態にあったのかという点も、今後の調査で明らかにされるべきだろう。ガス事業者や設備関係者には、これを機に、ガス漏えいを早期に検知するシステムや警報設備の設置・点検体制を改めて見直すことを期待したい。
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