大丈夫な人が頑張ることが復興へのはや道

 

熊本県益城町の「再春館ヒルトップ」に本社・工場を構える再春館製薬所は7月28日に発生した地震により、震度6強の揺れに見舞われた。10年前の熊本地震では2度の震度7により操業休止を余儀なくされ、全面再開まで10日間を要したが、今回は発災2日後から出荷を再開。被災地域に住む社員とその家族への個別ケアを徹底しながら、社員寮を被災者に開放するなど地域支援にも乗り出した。10年前と何が変わり、何が変わらなかったのか。代表取締役社長(CEO)の西川正明氏に聞いた。

西川正明(にしかわ・まさあき)氏プロフィール

株式会社再春館製薬所代表取締役CEO

熊本県出身、1973 年生まれ。米国の高校、Le Lycee Francis de Los Angeles を卒業した1993 年春、株式会社再春館製薬所に入社。お客様対応、広告制作、研究開発等、様々な業務を経験し、2001年、取締役経営統括本部長に就任。2002 年、独自の経営理念「ありたい姿」を示し、2004 年7月、代表取締役社長に就任。

 

1階に降りてきたら、全社員が外に出ていた

発災の瞬間、西川氏は本社2階でテレビ会議の最中だった。西川氏は「久しぶりに大きい揺れだなと感じました。社外の方に『ごめんなさい、揺れているので中断させてください』とお断りして会議を切断し、1 階へ降りました」と発災直後を振り返る。

大勢の社員が働く1 階に降りると、すでに全社員は建物の外へ避難を終えていた。「私が降りてきたときには、もう全社員が外に出ていました。管理職を含め、的確な行動ができた社員たちを本当にありがたいと思いましたし、力強さを感じました。こんなときに何を、と思われるかもしれませんが。当社はもともとファミリービジネス寄りで、どちらかというと号令を待つ文化もあった会社です。その中で、管理職が中心となり、みんなが自主的に社員を守るために動いてくれたことは嬉しく思いました」(西川氏)

背景には、2016年の熊本地震後に法務部門や危機管理部門が中心となって整備した「有事実働マニュアル」がある。

初動編と事業継続編の2 部構成、約30ページ。「何が起きたときに、誰が、何を優先し、何を決めるか」を定め、避難訓練も重ねてきた。10年前には存在しなかったものだ。

避難後は、子どもを持つ社員をまず優先し、10~15 分後には全社員の帰宅を決定。顧客対応の電話は、あらかじめ登録してあった災害対応アナウンスに切り替えた。10年前は、社員にその場で録音してもらい急場をしのいだが、今回は約10種類登録された音源から選んで切り替えるだけ。その後、危機管理委員ら約10人が集まり、翌日以降の復旧方針と安否確認の徹底を確認して初日を終えた。

小高い丘の上に建つ再春館製薬所本社