財物と休業を同時補償

写真を拡大銀泉リスクソリューションズ取締役支配人 森島知文氏

損害保険等の仲介を行う銀泉リスクソリューションズ(東京都千代田区)は、比較的規模が小さな企業でも利用が可能な新たな地震保険のコンサルティングサービスを開始した。
これまであまり大手損害保険会社が手をつけてこなかった中小・中堅企業の市場獲得をねらう。

同社が提案するのは、被災時に「財物損害」と「休業損失」を同時補償する地震保険。これまで国内で提供されてきた地震保険は、火災保険の拡張担保特約として財物だけを補償するものがほとんどで、事業中断による利益損失について補償する商品は極めて少なかった。さらに、補償額についても全額をカバーするのではなく、一定割合だけをてん補する「縮小てん補方式」が一般的で、「保険料が高い割に補償額が小さい」などの課題があった。

同社では、地震による損害は、物的損害より事業中断による休業損害の方が大きくなることに着目。「財物損害」と「休業損害」に、共通支払い限度額(例えば1億円~ 100 億円)を設定し、その範囲内で実損害額の100%まで保険金が支払われる方式を構築した。さらに企業の内部留保、計上利益を勘案し、一定の免責額(自己負担額)を設定することで保険料を安く抑えられるように工夫している。

■企業リスクを可視化
これまで、日本の損害保険会社が企業の地震リスクを引き受けたがらなかった大きな理由の1つに、リスクが把握しきれなかったことが挙げられる。地震の発生確率や規模は、ある程度がモデルによって予測できても、事業拠点や取引先が国内外にわたり、さらに事業の内容も幅広く、それらを査定するには多大な時間と手間がかかることが課題になっていた。

同社では、こうした課題に対して「1件1件の事業会社のリスクをプロの視点から正しく査定し、国内外の保険会社・再保険会社に提示し、中立・独立的な立場で交渉することで最適な保険プログラムを提供できるようにした」(銀泉リスクソリューションズ取締役支配人 森島知文氏)。また、高額な案件については、1社の保険会社にすべて引き受けてもらうのではなく、複数に分散することでリスクを引き受けてもらいやすくしている。中小・中堅企業は、比較的にビジネススタイルがシンプルなため、大企
業に比べればリスクが把握しやすいことも、同社が注目する点だ。

他方で、中小・中堅企業の場合、被災時のキャッシュフローは事業継続そのものに大きな影響を及ぼすことが懸念されるため、同社では、単に地震保険を紹介するだけではなく、銀行からの緊急災害融資や内部留保を組み合わせた効果的なリスクファイナンスについてもアドバイスしていくことにしている。

地震保険は一般的に、実損査定を経てから支払いが行われるため、企業が実際に資金を手に入れるまでには1~2年がかかるとされるが、同社のスキームでは、利益保険については「損失利益が1カ月以上、停止した場合に、毎月末に概算保険金が支払われる」。財物損害との共通限度額方式とすることで速やかな資金調達を可能とした。

■対象は全国、リスク高い地域でも
新たな地震保険については日本全国、幅広い業種の企業を対象にしており、新耐震基準(1982 年以降)の所有物件すべての包括契約でも、地震リスクの高い地域のみに限定した物件でも引き受けが可能としている。また、旧耐震の施設については、耐震診断や耐震補強などリスクコントロールを行った上で地震保険に入れるスキームを構築している。このほか、既存の火災保険については、そのまま継続し、地震保険だけを新たに別契約として「上乗せ」することもできる。

同社では、東日本大震災後に一時、同サービスの販売を停止したが、4月から再開。「すでに数多くの問い合わせがきている」と森島氏は話している。