2011/07/25
事例から学ぶ
リスク対策.com 2011年7月25日号掲載記事
古河電気工業株式会社(以下、古河電工)は、千葉、横浜、平塚、日光(銅箔事業所も含む2 拠点)の5つの事業所で工場の操業が停止した。建物・施設の損傷に加え、一部の事業所では、敷地内で液状化や路面の隆起などの被害が生じたが、あらかじめ策定していた事業継続計画(BCP)により速やかに業務を復旧させた。

古河電工では、「光半導体デバイス事業」を対象に、今年1 月、事業継続の事実上の国際的なマネジメントシステム(BCMS)の規格であるBS25999を取得した。同規格は、被災時でも重要業務を継続させるBCP 運用の取り組みを第三者機関が認証する際の基準となるもので、国内でも既に30 社近くが取得している。東日本大震災ではその成果が試されることとなった。
同社は国内7カ所に事業所・研究所を持ち、そのうち5 拠点が、3月11 日の東日本大震災で被災し事業を停止した。ほとんどの事業所では一時的な中断ですぐに操業を再開できたが、同社の基幹製品である光ファイバーケーブルや電力ケーブルを製造する千葉事業所では、中央排水溝が陥没し、食堂やトイレが使えなくなったほか、一部の工場施設が傾くなど設備面で大きな損傷が生じた。
敷地内では液状化現象や路面の隆起の被害も起き、これらの影響により光半導体やガラス基板の製造が中断する事態となった。光半導体デバイスの製造は同社のBCMS の対象にしている最重要事業のため早期の復旧が求められた。

■危険な場所には近づかない
地震発生当時、BCM 策定の中心的メンバーであったCSR 推進本部管理部の山本一郎主査は千葉事業所にいた。揺れがおさまるとすぐに大山事業所長を本部長とする現地対策本部が立ち上がった。初動対応として社員の安否確認を行ったが、山本氏は「携帯電話の通信が想像以上に繋がりにくかった」と振り返る。通信会社の通信制限により安否確認システムも十分に機能しなかった。夕方になってようやく、ほとんどの安否が確認でき、関連会社を含め全従業員が無事なことがわかった。社員の安全を守れた理由の1つは危険個所に従業員が近づかないように日常的に注意を促していたことだ。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方