2016/05/20
インターネット新時代の労務リスクマネジメント
2 クラウドサービス導入に当たっての留意点
クラウドサービスの導入に関しては、中小企業向けのものですが、独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンター(IPA)が「クラウドサービス安全利用のすすめ」を作成し、注意点などをわかりやすく示しています。
また、経済産業省では、「2013年度版クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン(改訂版)」および「クラウドセキュリティガイドライン活用ガイドブック」を公表しています。このガイドラインでは、クラウド利用者がクラウドサービスを利用する際に、情報セキュリティ確保のために、クラウド利用者自らが行うべきことと、クラウド事業者に対して求める必要のあることがまとめられています。企業は、クラウドサービスの導入により、これまでになかった情報セキュリティ上の問題が発生しうることを認識したうえで、事前の対策を講じることが求められます。ガイドライン中の「人的資源のセキュリティ」では、雇用前、雇用期間中、および雇用の終了または変更の際の課題と管理策などについて触れていますので、総務・人事部門としては、これらを参考にして、クラウドサービス利用規程の策定や、情報セキュリティに関する社内規程の見直しを行うことが必要とされます。
3 クラウドサービス利用下における労務リスク
クラウドサービスを導入した企業では、これまでにはなかったさまざまな労務トラブルも発生しています。
例えば、勤怠管理システムにクラウドサービスを利用している企業では、従業員がクラウドサービス上の勤怠管理システムにスマートフォンやタブレット端末を使って社外からアクセスし、勤怠データに関して不正な入力を行ったり、勤怠データを勝手に書き換えてしまうといった不正入力・修正の問題が生じています。
また、退職社員に関して、退職後においても、クラウド上のシステムにアクセス可能な状態のままになっていたために、不正にアクセスされ、機密情報を持ち出されてしまったという秘密保持義務違反のケースも発生しています。
さらに、最近では個人向けのクラウドサービスも増えており、GoogleのGmailやMicrosoftのHotmailなどの「ウェブメールサービス」が普及していますが、ウェブメールサービスの利用に関しては、競業他社へ転職しようとしている在職社員が就業時間中に、転職先の競業他社と連絡をとっていたり、社内の機密データをメールに添付して社外に持ち出したり、また、職場の同僚に対して一緒に独立しようなどと話を持ち掛け、就業時間中に退職後の起業計画に関する相談をメールで日常的に行っていたというようなトラブルも発生しています。社内においてこうした秘密保持義務違反行為や、競業避止義務違反・誠実義務違反などの不正行為がウェブメールサービスを利用して行われた場合、証拠収集に関する問題が生じることになります。
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