第2回 クラウドサービス導入下における労務リスクマネジメント

毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、東京都社会保険労務士会 働き方改革支援事業巡回コンサルタント。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
2016/05/20
インターネット新時代の労務リスクマネジメント
毎熊 典子
慶應義塾大学法学部法律学科卒、特定社会保険労務士。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会評議員・認定講師・上級リスクコンサルタント、日本プライバシー認証機構認定プライバシーコンサルタント、東京商工会議所認定健康経営エキスパートアドバイザー、東京都社会保険労務士会 働き方改革支援事業巡回コンサルタント。主な著書:「これからはじめる在宅勤務制度」中央経済社
編集部注:「リスク対策.com」本誌2014年7月25日号(Vol.44)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年5月20日)
「2009年はクラウド元年」と言われたように、クラウドコンピューティングは、日本では2009年頃から少しずつ広がりをみせ、近時ではクラウドコンピューティング事業者が、法人向け・個人向けに様々なクラウドサービスを提供しています。
総務省が行っている平成24年度通信利用動向調査によれば、国内においてクラウドサービスを利用していると回答した企業の割合は28.2%、資本金50億円以上の企業では52.8%となっています。
そこで、本稿では、クラウドコンピューティングやクラウドサービスの具体的内容、クラウドサービスの導入に伴って生じうる労務問題について説明します。
1 クラウドコンピューティングとクラウドサービス
「クラウドコンピューティング」という用語には決まった定義がなく、概ね共通している要素をまとめると、「従前手元のコンピュータの中にあったハードウエアの機能やソフトウエア・データをインターネット上のサーバ群に移行させ、それらを必要に応じて必要な分だけを利用するというコンピュータの利用形態」であると言えます。
そして、クラウドコンピューティング事業者から提供されるサービスが「クラウドサービス」と呼ばれるもので、共有化されたコンピュータリソースについて、利用者の要求に応じて、インターネットなどのネットワークを通じて提供されます。なお、「クラウド」という言葉は、システム構築図を作成する際に、インターネットなどのネットワークを雲の図柄で表現することからきています。
クラウドサービスとクライアントであるパソコンとの間の通信は、通常のWebサーバとWebブラウザ間で使用されている仕組みの上で行われます。従前、企業の業務システムへアクセスするためには、特別なソフトウェアの利用が必要でしたが、クラウドサービスではほとんどの場合、Webを閲覧するためのWebブラウザさえあれば、クラウドサービス上の企業の業務システムを利用することができます。このようにインターネットへの接続環境とWebブラウザ機能さえあれば、パソコン以外にもスマートフォンやタブレット端末などのデバイスを使って、どこからでも簡単にアクセスして利用できることがクラウドサービスの優れた点です。
そして、前述の総務省の調査によると、クラウドサービスを導入している企業の導入理由として、このような「どこでもサービスを利用できるから」という理由のほかに「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」「初期導入コストが安価だったから」「既存システムよりもコストが安いから」などが挙げられています。
ただ、クラウドサービスの導入は、企業に様々なメリットをもたらす一方で、情報漏えいなど、セキュリティ面で不安があることも否定できません。
インターネット新時代の労務リスクマネジメントの他の記事
おすすめ記事
被災時に役立ったのはBCPではなく安全確保や備蓄
今号から、何回かに分け、内閣府「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果を解説するとともに、防災・BCPの課題を明らかにしていきたい。第2回は、被害を受けた際に有効であった取り組みについて
2022/05/19
最後に駆け込める場所をまちの至るところに
建築・不動産の小野田産業は地震や津波、洪水、噴火などの自然災害から命を守る防災シェルターを開発、普及に向けて取り組んでいます。軽くて水に浮くという特色から、特に津波避難用での引き合いが増加中。噴火用途についても、今夏には噴石に対する要求基準をクリアする考えです。小野田良作社長に開発の経緯と思いを聞きました。
2022/05/18
新しいISO規格:ISO31030:2021(トラベルリスクマネジメント)解説セミナー
国際標準化機構(ISO)は2021年9月、組織向けの渡航リスク管理の指針となる「ISO31030:2021トラベルリスクマネジメント」を発行しました。企業がどのようにして渡航リスク管理をおこなったらよいか、そのポイントがまとめられています。同規格の作成にあたって医療・セキュリティの面から専門的な知識を提供したインターナショナルSOS社の専門家を講師に招き、ISO31030:2021に具体的に何が書かれているのか、また組織はどのようなポイントに留意して渡航リスク管理対策を講じていく必要があるのかなど、具体例も交えながら解説していただきました。2022年5月17日開催
2022/05/18
BCPは災害で役に立たない?
今号から、何回かに分け、内閣府「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果を解説するとともに、防災・BCPの課題を明らかにしていきたい。第1回は、BCPの見直し頻度と過去の災害における役立ち度合いについて取り上げる。
2022/05/18
政府調査 BCP策定率頭打ち
内閣府は5月18日、令和3年度における「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」についての結果を発表した。それによると、大企業のBCPの策定状況は、策定済みが前回の令和頑年度から2.4%伸び70.8%に。逆に策定中は0.7%減り14.3%で、策定済と策定中を合わせた割合は前回とほぼ同じ85.1%となった。政府では2020年までに大企業でのBCP策定率について100%を目標としてきたが頭打ち状態となっている。中堅企業は、策定済みが40.2%(前回34.4%)、策定中が11.7%(前回18.5)%で、策定と策定中を足した割合は前回を下回った。
2022/05/18
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2022/05/17
SDGsとBCP/BCMを一体的にまわす手法~社員が創り出す企業のみらい~
持続可能な会社の実現に向けて取り組むべきことをSDGsにもとづいてバックキャスティングし、BCP/BCMを紐づけて一体的に推進する、総合印刷サービスを手がける株式会社マルワ。その取り組みを同社の鳥原久資社長に紹介していただきました。2022年5月10日開催。
2022/05/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方