福島第二原子力発電所における津波による被害状況 画像提供:東京電力ホールディングス株式会社

新たな危険を生み出さない

福島第二原子力発電所の緊急時対策本部が設置されている建物は、専用のガスタービンの発電機を持っています。1階にガスタービン発電機があって、非常時にはこれを使うという設計だったのですが、1階は津波の被害により、発電機が稼働できなかったわけです。

「ガスタービンを強引にでも回しましょう」という意見もありましたが、私は、絶対にガスタービンを回すな、という判断を下しました。1階にガスタービンがあって、そこにオイルのラインがつながっているわけですけど、オイルタンクも地面の中に埋まっているし、ラインも地面に埋まっているわけです。何よりも、我々は、地面の上にいるというよりは、津波により、海水で洗い流されているボードの中にいるようなものでしたので、もしタンクなどが壊されているとしたら、ガスタービンを回した瞬間に油まみれになって、制御室の中にすらいられなくなるのではないかと思いました。ですから「ガスタービンは回すな。1階は出入りするな。津波がまた来るかもしれないから近寄るな」という指示をしました。その代わり、隣にある建物は電源が生きていたので、3号機はそこからケーブルを引いて電気をつけろという指示をしています。外はまだ明るい状況でしたので、作業をすることはできました。地震から2時間半ぐらいたった夕方6時40分ぐらいに応急の電気が復旧するんですが、このときに皆から拍手が起こったんですね。これがうれしかったです。一体になれていいチームだなと思いました。

しかし、4つのプラントのうち、1・2・4号機の3つのプラントで冷やせなくなった状況は解決しませんでした。このまま放っておくと、放射性物質を放出してしまうということになります。福島第一では200万キロワットぐらいの発電をしていて、その3台分が外に放射性物質を放出してしまったのですが、福間第二はその2倍にあたる440万キロワットで運転していましたので、もし第二が同じような事故になってしまったら、6時間ぐらいの遅れで、今の福島第一の2倍以上の放射性物質を出してしまったことになります。

まずは冷やす機能を復旧しようということで、現場の被害状況を見て、「使える機器」がどれなのかを、しっかり判断しようと心がけました。足りないものは取り寄せて、何とか冷やす機能だけでも復旧させるというのが、我々のやらなくてはいけないことだと認識したのを覚えています。

地震が起きてから、発生状況がわかるようにホワイトボードに線を描いていったという話をしましたが、その理由は、余震の規模が小さくなり、間隔が広くなった段階で、現場に行ってくれという指示をしたかったからです。