2019/03/13
講演録

1月24日・東京都中小企業振興公社フォーラムより
2006年から国際標準化機構(ISO)でBCP(事業継続計画)に関する規格の策定が始まり、私もその委員を務めています。その関係でBCP導入企業がどのくらいBCPを定着させているのか、非常に関心があります。現実には、BCPの定着に悩んでいる企業が少なくないようです。
平成26年(2014年)から東京都が行っているBCP策定支援事業へ参加した中小企業を中心にアンケート調査を実施しました。BCP導入企業のうち、BCPが「定着」「ほぼ定着」しているという回答が38%、「定着していない」という回答が62%でした。
そこで、BCP作成・定着にどのような要素が関連し、さらに原因となっているかを分析しました。BCP作成の理由は非常に明快で、「社長の指示」でした。社長が指示した理由では、「自社の態勢不備が不安」「社長の時に会社を潰せない」「営業上のプラス」と非常に興味深い3項目が上がりました。
一方、社長指示はBCP定着の原因でないことが、分析結果から確認されました。社長が指示してもBCPは定着しないのです。BCPを定着させる原因要素としては、「BCP環境」と「企業風土」から、いくつかの要素が浮かんできました。
BCP定着の原因要素と認められた「BCP環境」から浮かび上がったのは、「有能なBCPリーダー」「BCP必要性の認識」「関係部署の参加」「コンサル後、自分で進められる」「社員の盛り上がり」の6項目。
この中でも「社員の盛り上がり」は他の項目に比べてBCP定着と相関性が強く、BCP定着のキーワードであることを示していました。「社員の盛り上がり」とは何かを分析すると、「関係部署が広く参加している」「想定すべき具体的な緊急事態が社員で共有されている」「PDCAが回っている」「社外の支援のあと、自社内で進められる」との相関関係が認められ、こうした社内のBCP活動状況を示していることが分かりました。皆さんの会社で「BCP環境」を自己診断する場合に、これらの項目をチェック項目として使用できます。
- keyword
- BCP
- アニコム損害保険
- 東京都中小企業振興公社
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方