2019/04/03
講演録
企業への提案
■携帯も電話も使えない中での安否確認
ここからは提案ですが、まず、安否確認というのは最も大事だと思うんですが、携帯もNTTも残念ながら使えないんですね。ただ、インターネットは強いです。通信手段が使えないところで安否確認はできないし、現地でそれをやるのは大変です。それよりは、はるか遠くに離れたところからインターネットで安否確認をしてもらう方が、現場の負荷の緩和にもなりますし、正確性も期待できるのではないかと思います。
それから、組織の規模にもよりますが、大きな場所なら自治体などと安否確認の結果が共有できるようにすることも考えていいかもしれません。
■マップで一元管理できる仕組み
道路については、国道も県道、小さな道もいろいろ壊れてしまいます。正確な情報だけでなく、不正確なうわさも広がってくるので、マップは確実に作って、一元管理をするというのがとても大事だと思います。
■停電の想定を深める
それから、停電ということは徹底して想定を深めるべきだと思います。スピーカーなども使えなくなるので、危ない、避難せよと言っても何も通じなくなってしまうんですね。電気がなくても連絡が行き渡るような手段として拡声器なども使えるようしておいた方がいいと思います。停電するとドアも開かないし、トイレの水も出ないし、電気がなくなるというのは、本当にいろいろなところに不都合が出ます。
■出入口の確保。ヘルメット、安全靴、懐中電灯は絶対必要
あとは施設の出入り口については、地震や津波でモノが倒れたり、津波の場合は引き波で出入り口に全てが集まるので、移動したり転倒しないようにしておくのがとても大事です。ヘルメットと安全靴と懐中電灯は絶対に準備をしておく必要があると思います。
■最低限の作業は自分たちできるように
これは原子力だからかもしれませんが、事故直後、発電所にどんどん資機材を持ってきてほしかったのですが、トラックの運転手さんも、原子力発電所というだけでもう「嫌だ」と言って、入ってきてくれませんでした。契約していても、多分、その通りはやってくれないと思うので、やはり、いざというときに最低限は自分たちでできるようにしておくのが大事だと思います。コピー機などもどんどん使うのですが、メンテナンスの人が来てくれないので、自分たちで直す必要があります。
■支援物資の受け入れ態勢
それから支援物資の受け入れ態勢。たくさん届くのはありがたいのですが、荷物の下ろし方や仕分け方まで考えて送ってもらわないと現場には負担になります。内容にしても、歯ブラシとかいっぱい届くのですが、女性が必要とするモノは足りずに困りました。
あとは食料ですね。マジックライスを作るといっても人手が掛かるし、緊急対策室のコンセントにポットが何十個もつながるんですね。東京電力でありながら恥ずかしいのですが、ブレーカーが何回も飛びました。魔法瓶なども必要だと感じましたし、食料を作る人も必要だと改めて認識しました。水については、給水車が運んでくるのですが、それが飲めるか飲めないか分かりません。それで私はトイレに入れたというところもあるのですが、やはり備蓄は重要です。
■お金の準備
そして見落としがちなのがお金です。普段は伝票で処理しちゃうんですけど、こんなときに伝票を渡しても誰もやってくれません。キャッシュがないと駄目なんですね。
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