パワハラ対策は企業にとって急務となっている(出典:写真AC)

トーマツは4日、企業リスクに関する記者勉強会を東京都千代田区の同社で開催。シニアマネージャーの中澤可武(かむ)氏がパワハラやEU(欧州連合)の域外企業による企業買収審査の厳格化について解説した。

政府は3月9日、パワハラ防止措置を企業に義務付ける労働施策総合推進法の改正案を閣議決定した。今通常国会で法案が成立すれば、2020年春には相談窓口の設置などが必要となる。一方で厚生労働省の調査によると2016年度時点でパワハラ予防・解決のための対策を講じている企業は52.2%しかない。

中澤氏はパワハラが企業で起こった場合の悪影響として従業員への健康被害、人材流出のほか、「公共機関の指名停止も含めた、売上や収益の低下もありうる」と指摘。ハラスメントの防止のため、行為者への対処方針を就業規則に定め従業員に周知することや、様々なハラスメントなど人権にかかわるリスクの種類、範囲、実例を従業員や管理職以外に経営者にも教育や研修によって知らせることが大事だとした。特に立場を利用したハラスメントが多いことから経営陣も懲罰の対象になりうるというメッセージ発信も必要と指摘している。

通報者の秘密を守り不利益にならないような内部通報制度の設置やヒアリングの実施に加え、ハラスメントの疑いがSNSへの書き込みなどを通じ外部に発信された場合の対応も必要だとした。中澤氏は「国内だけでなく、海外拠点も含めた対応が求められる」とも述べた。

EUは3月5日、閣僚理事会でEU域外からの直接投資に関する審査の厳格化を承認し、4月に発効する。EUにとって戦略上重要なロボットなどハイテク分野が対象。欧州企業の買収が増えている中国企業を念頭に置いているとみられるが、日本企業も域外企業であり対象である。

中澤氏は「審査の厳格化により買収を前提とした事業計画の遅延や頓挫のほか、サプライチェーンの見直しを迫られる可能性もある」と企業への影響を指摘。厳格化をリスクとして考慮した事業計画を立てることや、企業グループ全体や各拠点への財務への影響評価の仕組み作りが必要だとした。さらに厳格化について事実確認や今後の見通しを特定したり、経営陣に報告したりするような体制も必要だとし、現地での調査や日本でも影響評価をできるようにすることが大事だと指摘した。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介