2016/04/28
スーパー豪雨にどう備える?
被害報の他に、新たに加わった情報は、ヘリからの空撮画像だ。撮影した被災地の画像を地図上で即座に確認できるようになった。国交省はヘリを8台所有しており、そのうち2台が撮影した映像を衛星通信でリアルタイムに転送できるヘリサットシステムを搭載している。このヘリサットを搭載したヘリが隙間のないように被災地の上空で旋回を繰り返し往復して撮影し、集めた映像をつなぎ合わせた画像がDiMAPSで見られる。映像情報にGPSやカメラの角度情報、ヘリ姿勢情報なども加えたデータを送信し、自動的に広範囲の被災画像が組み上がる。「このようにヘリからの空中撮影写真をリアルタイムで地図化し、一般に公開する試みは世界初ではないでしょうか」と飯島氏は胸を張る。

9月の集中豪雨で鬼怒川が決壊して浸水した常総市の面積は最大で約40㎢だったと発表があったが、この計算にもヘリサットの映像が一部利用されている。ヘリサットが取得した画像をDiMAPS上で時間軸に沿って表示させると、常総市の浸水エリアが鬼怒川決壊で拡大してから、排水によって縮小していく様子が分かる。ヘリサット画像だけでなく通行止めなどの道路情報、土砂災害なども同様に時間軸に合わせて表示させることで被害の変化も確かめられる。「誰もが被害の全体像を把握しやすくなりました」と飯島氏は語る。
さらに、河川などに設置している監視カメラの映像も地図上に表示されたカメラマークをクリックするだけでウェブ上で見ることができる(一般への公開はしていない)。鬼怒川決壊も、国交省では、監視カメラから状況を確認し、直ちに全国からの支援体制を整えた。現地の職員が撮影した写真なども、そのまま地図上に表示することが可能だ。

DiMAPSを導入し国交省のオペレーションは大幅に早まったという。「従来は地震が起きると15分で参集して、監視カメラにより被害状況を確認するのに10数分かかっていました。このシステムは地震計が置かれた場所の震度がすぐわかり、被害が大きそうな地点を絞り込み重点的に確認できるようになりました。被害情報の把握が確実にスピードアップしたおかげで対策の検討開始も早まりました」と飯島氏は説明する。
集約されるのは被害情報だけではない。これまではそれぞれのウェブサイトにばらばらに表示されていた浸水想定地域や土砂災害危険個所などハザードマップなどの情報も併せて表示できる。
スーパー豪雨にどう備える?の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方