2016/04/28
スーパー豪雨にどう備える?
被災状況が一目でわかる

地震、津波、風水害、噴火など災害時に国土交通省が集めた情報を地図上に集約して表示する統合災害情報システム(DiMAPS)の運用が9月1日から始まった。鬼怒川や渋井川の決壊を引き起こした9月の関東・東北豪雨の際にもDiMAPSで集約した情報がウブ上で一般公開された。震度分布や津波情報、通行止めなどの道路情報、鉄道やフェリーの運行状況、土砂災害、河川の被害情報、ヘリによる空撮画像など国交省が集める多くの情報を一元的に地図上に示せるのがこのシステムの最大の特長だ。
東日本大震災でホンダから自動車通行データの提供を受けたGoogleが地図上に「いま通れる道」を表示した活動が発端となり、災害時にGIS(地理情報システム)を使った情報共有は瞬く間に広がった。その後も、時間経過とともに変わるニーズに合わせて、避難所や医療機関、スーパーやガソリンスタンドなどの情報を地図上にプロットする取り組みが活発に行われた。それでも、リアルタイムに掲載される情報は限られ、被害状況の一元的な管理には今なお課題が残る。
こうした中、国土交通省は、これまで文字で公開してきた災害時の被害情報を位置情報と紐付けて地図上に可視化する統合災害情報システム「DiMAPS」を9月に一般公開した。誰でもどこからでも国交省の集約した地図情報にアクセスすることができる。4月から内部での試行運用を開始し、アップデートを重ねてきた。上空のヘリが撮影した被災地の画像もリアルタイムに地図上に表示されていく。さまざまな情報を「見える化」したことで、より早い状況把握が可能になったという。同省水管理・国土保全局防災課災害対策室地震防災係長の飯島直己氏は「国交省では、災害時の情報集約は本省内の各局や地方整備局、気象庁、海上保安庁などから集めた情報を被害報という文章でまとめ、そこから地図にプロットする方法をとっていました。しかし、東日本大震災では、道路、河川、港湾、空港など広範囲で同時多発的に被害が発生しました。当時は防災センターにいた国土地理院の職員が手作業でプロットしましたが、リアルタイムかつスピーディには対応できませんでした。その苦い経験がこのシステム開発の出発点です」と語る。

被害報を地図に示した
地図上に表示される情報は、基本的には国交省が紙で発表している被害報のうち、位置情報を伴うもの。具体的には、地震なら震度、震源、津波警報、津波注意報など気象庁発表の情報と、同省が管理する河川、道路、鉄道、海事、港湾、航空、物流などに関する被害状況だ。
地震が発生すると、まず地震速報と津波警報が自動的に取り込まれ表示される。地図上に示される震度は気象庁が発表する「震度速報」「震源・震度に関する情報」をもとに地図上にプロットされる。
スーパー豪雨にどう備える?の他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方