2019/04/18
昆正和のBCP研究室
■非常時備蓄の場所と管理について
本連載の第3回「熊本地震における被災企業のアンケート結果」で見たように、約半数の企業は「備蓄品(水、食料、災害用品)の購入」が役に立ったと答えている。一般に非常時備蓄の必要性が叫ばれることが多いが、一般家庭はともかく、組織にとって「なぜ備蓄が必要か」を理解していない会社は少なくない。念のため書いておこう。
会社に非常用食料等の備蓄がないと、公共交通機関や道路の寸断で帰宅できなくなった従業員や訪問者に対し、「会社には何も用意がないから早く帰ってください」と帰宅や帰社を促すことになってしまう。これは路上にあふれる帰宅難民を増やす一因ともなるので避けなくてはならない。また、食料や水が不足しがちな復旧活動においても、備蓄食料があればなんとか空腹をしのぐことができる。
このように基本的な備えとして非常時備蓄は不可欠である。備蓄は通常3日分の食料と水その他を用意する。保管場所は誰でも知っている場所に。鍵はダイヤル式のものを使い、番号を知っている者はだれでも解除できるようにする。長期保存(5年など)可能な防災備蓄品ならベターだろう。
よく「保管場所」がないとこぼす企業担当者も少なくない。しかし多くの場合、3Sや5S(整理整頓の習慣)などを行えば、備蓄品を収納するスペースぐらいは確保できるはずだ。
一方、「備蓄品の管理が面倒」「消費期限が来る度に廃棄するのはもったいない」との声も聞く。しかし管理を簡素化する工夫はいろいろあるだろう。例えば消費期限のせまっている食料や水は、会社の防災訓練などの行事の際に従業員に配る、先ほど述べたように長期保存可能な防災食料品のセットを購入して管理の負担を減らす、カップラーメンなど消費期限の短いものはローリングストック法(消費したらその分を補充する)を適用するといったことである。
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