箱も計画も中身は空っぽということがないようにしないといけません(出典:写真AC)

■フタを開けてみたら…

ある時、これからBCP(事業継続計画)を策定することになっている運送会社を訪問し、予備的な防災リスク・チェックをさせてもらったことがある。駐車場の一角にインタンク(自家給油設備)があり、傍の塀には錆びた鉄板の扉に「消火器」と書かれたボックスが備え付けられている。その大きさから中型の消火器が2本は入っていそうである。ちょっと中を拝見してよろしいですかと担当者に言って扉を開けてもらうと、なんと中は空っぽだ。「あれ…!?」とお互いに顔を見合わせてしまったのだった。

すべてとは言わないが、BCPの策定に取り組もうとする中小企業の中には、このように基本的な防災対策ができていない会社が少なくない。少し矛盾する表現かもしれないが、ITの復旧技術を起源とするBCPには、もともと防災・減災的な側面はない。国のガイドラインなどはすでに防災対策を済ませている大企業を念頭に置いて書かれており、もっぱら製品やサービスを提供し続けるための戦略部分を求める内容となっている。

BCPはプランA(通常の業務体制でカバーすること)がうまく機能しなかった場合に備えるプランB(緊急用の代替プラン)に相当するものだ。防災・減災対策に不備があるということは、プランAとプランBの基礎をなす土台部分が脆いということである。ガイドラインには規定されていなくても、防災・減災対策はBCPの暗黙の大前提、必須要件なのである。

中小企業がこれからBCPを作ろうとしたら、まずは自社の基本的な防災・減災対策の現状をチェックするところから始めなくてはならない。そこで今回を含め3回にわたって、主に地震を中心に、BCPの前提となる中小企業の防災・減災対策のポイントに焦点を当てる。対象は非常時の備蓄/ライフライン/重要データと重要書類/工場に固有のリスクその他である。