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災害時に「トップ」がなすべき11カ条 
三条市は、大規模な水害を経験した全国の市町村でつくる「水害サミット実行委員会」の事務局となっている。今年8月22日、全国の市町村長の陣頭指揮に役立ててもらうため、災害対策への助言「災害時にトップがなすべきこと11カ条」を発送した。
1.避難勧告を躊躇しない
2.判断の遅れは命取り。判断を早くする
3.人は逃げないことを理解する
4.ボランティアセンターをすぐに立ち上げる
5.住民の前に姿を見せ、被災者を励ます
6.住民の苦しみや悲しみを理解していることを伝える
7.記者会見を毎日定時に行い、情報を出し続ける
8.広いゴミ仮置き場をすぐに手配
9.住民を救うためのおカネの手配は果敢に実行
10.視察は嫌がらずに受け入れる
11.応援・救援に感謝の言葉を伝え続ける 

一見、当たり前過ぎる内容だが、果たして自治体トップはどれだけの決断力で実行できるのだろうか。

安いコストで洪水対策

地域を水害から守る「田んぼダム」
見附市

見附市は、新潟県の中央に位置する4万1800人の町。2004年の「7.13水害」を教訓として、ソフト、ハードの両面から水害対策を考えた。その1つとして、市が全国に先駆けて事業化したのが「田んぼダム」というユニークな取り組みだ。

田んぼダムとは、田んぼが持っている「水を貯める機能」を利用して、大雨の時に一時的に水を貯め、河川へ時間をかけてゆっくり排水し、下流の農地や市街地の洪水被害を軽減する取り組みのこと。見附市では2010年から、市内の貝喰川流域の田んぼで開始した。現在、新潟県全体では1万ヘクタール、そのうちの1200ヘクタールが見附市で実施されている。 

「ピーク時には、水田1枚で普段の2倍の水(57万㎥)を貯めることができ、効果が期待できます。自治体だけで取り組めて、排水調整管の設置などにかかるコストが1カ所数百円と安いことから注目されるようになり、全国で取り組みが進んでいます」(見附市産業振興課農林整備係総括主査の椿一雅氏)。 

自治体の判断で、安いコストで実施できる─いいことずくめのように見えるが、椿氏は「河川の改修など水害を防ぐハードの取り組みが第一であることを忘れてはいけません」と付け加える。ハードの整備には費用や時間がかかり、雨もいつ降るか分からないジレンマがある。だからこそ、民間の力を借りた田んぼダムが必要になることを理解してもらわないと、賛同を得られないとする。しかも、流域の水田で広範囲に取り組まないと効果は薄い。田んぼを所有する農家に協力をお願いする形なので、強制もできない。 

「農家にとっては、6月下旬から8月上旬までは田んぼを乾かさなければならない時期。皮肉なことに、そういう時期に毎年、大雨が降るのです。協力いただいている農家250軒から(大雨時の対応について)アンケートを取ったところ、36%が何らかの理由で排水調整を実施しなかったと答えています。米作りに大事な時期に水が貯まってしまうなど、農家にとってデメリットが大きいのです」(椿氏)。 

これから取り組んでくれる人にメリットを感じてもらえるよう、農作物への影響などの検証を続け、もっと目的を理解してもらえるようPRにも力を入れていきたいとする。