2016/05/20
スーパー豪雨にどう備える?
-->
災害時に「トップ」がなすべき11カ条
三条市は、大規模な水害を経験した全国の市町村でつくる「水害サミット実行委員会」の事務局となっている。今年8月22日、全国の市町村長の陣頭指揮に役立ててもらうため、災害対策への助言「災害時にトップがなすべきこと11カ条」を発送した。
1.避難勧告を躊躇しない
2.判断の遅れは命取り。判断を早くする
3.人は逃げないことを理解する
4.ボランティアセンターをすぐに立ち上げる
5.住民の前に姿を見せ、被災者を励ます
6.住民の苦しみや悲しみを理解していることを伝える
7.記者会見を毎日定時に行い、情報を出し続ける
8.広いゴミ仮置き場をすぐに手配
9.住民を救うためのおカネの手配は果敢に実行
10.視察は嫌がらずに受け入れる
11.応援・救援に感謝の言葉を伝え続ける
一見、当たり前過ぎる内容だが、果たして自治体トップはどれだけの決断力で実行できるのだろうか。
安いコストで洪水対策
地域を水害から守る「田んぼダム」
見附市
見附市は、新潟県の中央に位置する4万1800人の町。2004年の「7.13水害」を教訓として、ソフト、ハードの両面から水害対策を考えた。その1つとして、市が全国に先駆けて事業化したのが「田んぼダム」というユニークな取り組みだ。
田んぼダムとは、田んぼが持っている「水を貯める機能」を利用して、大雨の時に一時的に水を貯め、河川へ時間をかけてゆっくり排水し、下流の農地や市街地の洪水被害を軽減する取り組みのこと。見附市では2010年から、市内の貝喰川流域の田んぼで開始した。現在、新潟県全体では1万ヘクタール、そのうちの1200ヘクタールが見附市で実施されている。

「ピーク時には、水田1枚で普段の2倍の水(57万㎥)を貯めることができ、効果が期待できます。自治体だけで取り組めて、排水調整管の設置などにかかるコストが1カ所数百円と安いことから注目されるようになり、全国で取り組みが進んでいます」(見附市産業振興課農林整備係総括主査の椿一雅氏)。
自治体の判断で、安いコストで実施できる─いいことずくめのように見えるが、椿氏は「河川の改修など水害を防ぐハードの取り組みが第一であることを忘れてはいけません」と付け加える。ハードの整備には費用や時間がかかり、雨もいつ降るか分からないジレンマがある。だからこそ、民間の力を借りた田んぼダムが必要になることを理解してもらわないと、賛同を得られないとする。しかも、流域の水田で広範囲に取り組まないと効果は薄い。田んぼを所有する農家に協力をお願いする形なので、強制もできない。
「農家にとっては、6月下旬から8月上旬までは田んぼを乾かさなければならない時期。皮肉なことに、そういう時期に毎年、大雨が降るのです。協力いただいている農家250軒から(大雨時の対応について)アンケートを取ったところ、36%が何らかの理由で排水調整を実施しなかったと答えています。米作りに大事な時期に水が貯まってしまうなど、農家にとってデメリットが大きいのです」(椿氏)。
これから取り組んでくれる人にメリットを感じてもらえるよう、農作物への影響などの検証を続け、もっと目的を理解してもらえるようPRにも力を入れていきたいとする。
スーパー豪雨にどう備える?の他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方