2019/05/17
危機管理の神髄

理由はブラックスワン
白くないスワンを見た人はいないので、“ブラックスワン(黒い白鳥)”は16世紀のロンドンで不可能なことの代名詞になった。それは1697年に、ドイツの探検家がヨーロッパ人としては初めて西オーストラリアでブラックスワンを見たことによって終わった。
ナッシム・ニコラス・ターレブはその著作『ブラックスワン』で我々の希望の煉瓦壁に風穴を開けて、この捉えどころのない生き物を解明した。彼は第一次世界大戦、ソ連の崩壊、9.11テロをその例として挙げている。ヘッジファンドのマネージャーそしてデリバティブのトレーダーであったターレブは銀行と取引業者はブラックスワンに対して脆弱であり、彼らの欠陥のある金融モデルをはるかに超える損失のリスクにさらされていると主張する。
2007年にその本が出版されたとき、ニューヨーク市そして全国の災害専門家はウォールストリートのリスクに関するユニークな洞察と、それがニューヨーク市とそれ以外の広い世界にも当てはまるものであることに衝撃を受けた。
それ以来、災害専門家は“ブラックスワン”という言葉を広範な大災害を指すものとして使用してきた。それゆえこの本でも大災害の同義語として扱うことにしよう。
ターレブのブラックスワンには3つの特徴がある。第一に、それは過去のいかなる出来事からも起きるだろうとは想像できないものであり、我々の想定をはるかに超えるものである。第二に、それは途方もないインパクトを与えるものである。第三に、我々は事後的にそのことの説明を考え出して、それがあたかも予見可能なことのように見せかける。
あなたが生きている今日、ブラックスワンが現れる確率は低い。あまりに低いので計算できないほどである。それゆえ無視する。しかしいつ起きてもおかしくない。そして一旦発生すればその結果は、人類の歴史において突出したものとなるほどに凄まじいものである。ターレブは、ブラックスワンをもっとうまく予想する必要があると言っているのではない。それは我々が思っている以上に頻度が高く、なおかつ破壊的であることを理解してほしいということである。
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