福祉避難所の開設目安は発災3日後

現在、板橋区では災害が発生した際に「福祉避難所」として施設を利用する協定を締結している福祉関係施設は、区内に42施設で1395名の受け入れが可能とされています。しかし、要配慮者の方すべてを福祉避難所に避難するとなると、区内だけでは施設が足りないと言われています。

災害が発生してから自宅の被害が大きかった方は、避難所で生活する状況が続きます。福祉避難所は、平常時には入所・通所施設として運営されており、災害時には、各施設の安全確保や職員の配置等の確認を行った上で、施設の空きスペースなどを利用して開設することになります。そのため、災害発生から概ね3日程度経過後の開設を想定しており、開設後速やかに、高齢者や障害のある方で特に配慮を必要とする方が福祉避難所へ移動を始めることになります。

まず、大規模な災害が発生したときには、災害対策本部が立ち上がり、「福祉避難所」の立ち上げについて、板橋区の職員で構成する災害対策要配慮者班(以下、「要配慮者班」という) が施設との調整を開始します。

次に、要配慮者班が協定締結福祉施設に福祉避難所の開設要請を行い、施設側は、施設の被害状況などを確認し、受入態勢などを調整したうえで、福祉避難所の開設が可能かどうか判断していくことになります。

また、避難所での生活において、高齢者や障害のある方で特に配慮を必要とする方の判断は、災害対策避難所班(以下「避難所班」という)が情報を収集し、要配慮者班に伝達することになっています。その後、要配慮者班が施設と受入れ対象者の受入れが調整を行い、受け入れ先が決まり次第、随時、避難者の移動が始まることになります。

こうした流れを災害時に速やかに行うためには、要配慮者班と避難所班、福祉施設との連携が必須となります。いかにスムーズに話しを進め、配慮が必要な避難者の方がより速やかに福祉避難所に向かうことができるか…ということが大切になります。

そのためには、日頃から要配慮者班と避難所班のスムーズな連携の話し合いや訓練が必要となります。しかし、要配慮者班と避難所班の管轄部署が現状では別。
日常の業務が優先的に行われ、日頃から災害時に連携をとる訓練が具体的にできていない状況を課題として捉えられています。

また、避難者を受け入れる施設の方々は日頃、特別養護老人ホームなどを運営されている方などで日常業務に忙しくされています。災害時に備えて施設職員の方々も、日頃から、福祉避難所の開設に向けた訓練を積んでおかなくてはなりません。

その対策のために具体的な訓練計画を立て、関わる組織の方々が主体的になって、訓練に取り組まれています。実践的な訓練を進めるにつれ、避難所を運営する際に実際に携わる方々は、「他人事」と捉えがちだった避難所運営が実践して初めて「自分事」と置き換えられます。

板橋区と施設との訓練が行われた際に、「施設長、どうしますか?」と管理者に判断を委ねることが多くあり、「施設長が不在の際に災害が起きたらどのような対応をとられるか」という質問が投げかけられると、施設職員の方々ははっとした表情になっていたようです。「自分」の考えで行動を判断しないといけないこともある。でも経験がなければ、決断することもできない。災害という非日常時に判断基準を持てる状態にしていくことが必要だと実感されたようです。

「そのための訓練です」と板橋区危機管理室地域防災支援課長・木内俊直さんは話します。「訓練は本番のように。本番は訓練のように。」ということを心がけながら、他部署、他団体との連携を図られているようです。

より具体的で実践的訓練を実践していきたいと話す木内さん

「長期戦になる災害時。頑張りさせすぎないことも大切にしています」と木内さん。施設を運営されている方は、目の前の方のために精一杯活動をしようとしてくださる。しかし、災害時は長期戦。時間や人員配置の体制をしっかり整えて、支援をする側で倒れる人が出ないように体制を組むことも非常に大切になります。

有事の際に体制をきちんと組めるように、平常時にできることから計画を具体的に立てておくことを板橋区の方々は実践されています。

「誰一人取り残さない」防災対策に臨む板橋区の皆様の取り組みは続きます。

皆さんも、自分自身の命そして家族の命をまずは守り、周辺の地域の方の命も守ることができるような体制を築くために、まずは、ご自身のお住まいの地区について「知る」ことから始めませんか?

(了)