□対策:動機、機会、正当化を排除する

クレッシーの理論を企業の不正防止の視点から見た場合、社内で「動機」「機会」「正当化」のいずれかの要素を排除する仕組みを作れば、社内不正は防ぐことができると考えられます。では、3つの要素のそれぞれでどのような対策が考えられるでしょうか。

① 「動機」の排除
個人の「他人と共有できない問題」が動機と考えると、その排除は企業にとって最も難しいものとなります。難しいというより「できない」と捉えたほうがいいでしょう。また、「プレッシャー」も動機になり得るとすれば、「プレッシャーをかけない」ということを対策の一つとすることも考えられますが、業務を行うに当たって、何らかのプレッシャーがあるのは、むしろ当然です。数字や時間に何のプレッシャーもない業務を探す方が難しいのではないでしょうか?強いて言えば「(パワハラで訴えられるほどの)過度なプレッシャーはかけない」ことは対策になり得ますが、それぐらいかもしれません。
「動機」を排除することにあまり躍起になる必要はないと思われます。

② 「機会」の排除
これは企業にとって着手しやすい分野で、すでにさまざまな対策を行っている企業も多いのではないでしょうか。例えば、●第3者のチェックを入れる、●定期的に、あるいは臨時に現金や在庫の確認を行う、●監視カメラを取り付ける、などの対策は全て「機会」の排除につながる対策です。企業によっては●社内メールのモニタリングを行う、などを行っているケースもありますが、これも「何か事が起こった場合に社内メールから事実関係が追える可能性がある」というけん制をもって「機会」の排除につなげている例といえます。

ただし、昨今、この「機会」を排除する仕組みを取り入れすぎることに対しての弊害も言われ始めているようです。例えば●不正防止のための新しいルールを数多く取り入れたことで業務が停滞してしまった、●社員が萎縮している、●「自分たちは信用されていない」と経営者に対して不信感を抱き始めた、などです。さらに、●「本来の目的(不正防止)を忘れ、ルールを守ること自体が目的になってしまって、本末転倒になっている」という声も聴いたことがあります。
そこで近年いわれているのが、「正当化」を排除する仕組みづくりの重要性です。

正当化を排除する仕組みとはどういうことか? 次回引き続き検討したいと思います。(次回に続く)

今回のリスク:管理職・一般社員が注視すべきオペレーションリスク

 

 

(了)