ヤマハの松島氏は訓練や教育による意識付けの重要性を語った

リスク対策.comは11日、東京都千代田区の明治薬科大学剛堂会館ビルで第6回危機管理塾を開催。ヤマハ株式会社総務部総務・渉外グループ主事の松島一博氏が「『点呼、安否確認、帰宅判断』の全社員への意識付け」をテーマに講演した。

世界有数の楽器メーカーであるヤマハは、本社のほか国内の工場も静岡西部に集中。東海地震が40年以上懸念されているがエリアだが、「東海地震を中心とした防災対策から、グループ・グローバルを対象とした事業継続対策にシフトしている」と松島氏は説明した。組織上は総務部総務・渉外グループにBCM班があり3名で運営。さらに社長の下のリスクマネジメント委員会にBCP・災害対策部会があり、そこの事務局をBCM班が担っているという。

国内拠点は耐震基準に合わせて改修。さらに2018年4月には経営への影響の最小化を目指してヤマハグループ共通のルールとなる「グループBCP規程」を策定した。リスクシナリオとして自然災害、大規模事故、国レベルの紛争・混乱を想定。現場などからの情報を集約し、リスクマネジメント委員会に上げ、リスクの顕在化から48時間を目安に事業継続方針を決定する体制としている。復旧については全体的な総括をする総本部に人事対策、建物設備対策、情報システム対策、情報発信、財務対策、物流対策、生産対策、調達対策、営業対策の各グループが早期回復に協力。各グループで行動手順(チェックリスト)を用意している。

従業員向け教育や訓練にも注力している。防災ハンドブックのほか、防災関連情報を掲載した「ヤマハ防災ポータルサイト」も設置し、会社にいないときの被災時も身を守れるよう教育。「自分にとって都合の悪い情報を無視する正常性バイアスと、周囲に合わせようとする多数派同調バイアスから早く脱却し、命を守るよう伝えている」と松島氏は語った。

同社では震度6弱以上の地震があった場合、該当のエリアに勤務する従業員は「エマージェンシーコール」などで24時間以内を目安に上司に安否を報告する必要があり、年2回の訓練も実施。静岡西部の9拠点では同じく年2回、地震防災訓練として点呼や避難誘導、情報伝達を行う地震防災訓練が実施される。

ほかにも防災通信訓練、担当者による応急救護訓練や消火訓練は月1回、災害対策総本部を対象としたBCP訓練は年1回、現地対策本部を対象とした地震初動対応訓練は2年に1回と訓練を充実させている。

今後、「帰宅/移動トリアージ」と題し、地震があった際に従業員が帰宅・移動もしくは職場への残留を判断するための基準作りを行う方針。掛川事業所は浜岡原子力発電所から30キロ圏内にあり、この状況も考慮した上で外部情報を基に従業員各自が判断を下せるようにする。松島氏は「自分の命をまず守り、企業の安全配慮義務を果たしつつ各自で帰宅判断もできるようにしたい」と述べた。そして「初動対応を適切に行うことで、ヤマハグループの事業継続能力をより高める」とした。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介