2019/08/01
しば副編集長のmi vista
マニュアルよりも経験知
実施の際のやり方については、意外にも細かなマニュアルはこれまで存在しなかった。「これまでも台風などの場合には路線ごとに運休計画を立ててきた。運行管理を行っている指令所において、ある路線で運休する場合に、どういった手順を踏んでいくのか、運休から運転再開に向けてのノウハウは蓄積されている」と中條氏。つまりは路線ごとに間引き運転や全面運休についてまず判断。「アーバンネットワーク」と呼ばれる京阪神エリアの運行全体をつかさどる大阪総合指令所が各路線の状況を見て、「計画運休」にするかどうか検討する流れとなっている。
こうした中、2018年にJR西日本は「計画運休」に関する社内のガイドラインを策定した。「計画運休」が与える社会的影響や経営への影響などが大きく、社内においてこれまで蓄積されてきたノウハウを一定量は共有化し、標準化する必要性があったからだ。「計画運休」を実施する場合、気象庁やウェザーニューズ社からの気象情報を基に最接近の2日前をめどに実施するかもしれない旨を発表。前日には最終的な判断を下し、その内容を発表する。
実際にやると決めた場合、マスコミ向けの発表だけではなく、必要によっては沿線の府県や市町村にも連絡。駅では電光掲示板の他、多言語対応翻訳メガホンも用いて説明する。近年はJR西日本のサイト以外に、ツイッターなどSNSも大きな役割を果たしている。
「『計画運休』を実施する際の大阪総合指令所は本当に戦場のよう」と中條氏は説明。指令所は200~300人規模で対応にあたる。実施決定後、間引き運転から始まるが、これに伴って発生する車庫への入庫はスムーズな運転再開に向けて非常に重要な作業となってくる。また、運転再開に向けたダイヤの組み直しとシステムへの入力も労力と時間のかかる作業だ。さらに、今回策定したガイドラインには線路点検・復旧のタイムラインも記載した。
しば副編集長のmi vistaの他の記事
- 「東京が国を変える」防災で推進を
- ヤフーなど52社が無償で被災地支援
- 中学生宿泊による避難所設営・運営訓練
- 交通機関の理想像変革、JR西の計画運休
- 「組織使い捨て型テロ」イスラム国新手法
おすすめ記事
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方