3. 公助:過去の教訓を生かした公助の在り方

凄まじい火災だったことが分かります(筆者撮影)

今回、火災が起こった京アニ第1では「防災訓練」もしていたようですが、どのような内容だったのでしょうか?

「煙が充満した時は、はう姿勢で床を見ながら、できればタオルを口と鼻に当てて脱出すとよい」と今回訪問先の消防署で聞きました。一般に学校などで行われる煙の中を通る体験訓練では霧のような中を潜り抜ける体験も行われますが、実態とは天地の差があります。消火訓練や避難訓練の在り方は今後、日本全体で改善していくべき問題のように思います。

屋外の避難路がないなら、窓からの避難の方法も今後は行政と企業が一体となって検討していかなくてはいけないと思います。1972年に起きた千日前デパート火災では118人の方が犠牲になりましたが、窓から飛び降り亡くなった方もいました。その10年後、東京のホテルニュージャパンの火災では、やはり火災で避難口が使えず33人の人が亡くなりました。こうした教訓をどう生かしていけばよいのでしょうか? より安全な避難の方法を企業だけで考えることはできません。知恵を絞り、行政と企業が命を守る行動が取れる最適な方法を考えていくべきではないでしょうか?

消防庁は先日、通達を出しましたし(産経新聞2019年7月26日1面、ガソリン販売身元確認強化)、警察庁は25日警視庁と各都道府県警に対しガソリン販売の際に、不審者を発見した際は、消防機関と連携した対策を取るように通知しました。
今回の火災から得た教訓から宇治市の消防本部はすでに次の作戦に着手していました。「洛タイ新報」7月26日(金)のトップ記事は「らせん階段のある3階以上の建物の実態調査を行い、煙や火の回りが早いことから防火指導を行い、避難訓練を呼び掛けていく」という主旨のものでした。

同じく1面の記事です。ガソリンスタンド(GS)で容疑者がセルフ式のGSで購入したガソリンを犯罪に使用した可能性が高くなっていることから「宇治市消防本部では市内の12カ所(うちセルフ式6カ所)の実地調査を23日に実施。すでに5日間経過した時点で常連客のみの販売に切り替えるなど自主的な販売規制をかけていることを確認した」という内容です。さらに記事は以下のように続きます。「京都府消防本部は25日、府石油商業組合等に身分証明書(顔写真のある運転免許証等)の提示等による本人確認のほか、住所、氏名、販売日時、数量、使用目的の記録などを取るように依頼。今後、宇治市内のGSでもこれを順守した取扱いになる」。以上、公助は抜かりのないように、次の構えに移行しています。この動きをどう広げていくか、どう企業を巻き込むかが問われています。

(了)