2015/01/20
C+Bousai vol2
【検証 長野県神城断層地震の対応】
地元密着のボランティア支援
今回の地震では、非常に早い段階から、県と被災市町村の社会福祉協議会が中心となり、ボランティアセンターを立ち上げるなど、活躍した。被災規模が比較的に狭く、降雪時期とあって、危険性もあることから、地元を知る周辺市町村の住民に対象を絞り、ボランティアを募集した。現地に即した形で、被災住民に寄り添った活動を展開するには地元の力が大きい。もう1つ、注目すべきは、今回の地震では早い段階から、プロの建築家が被災者ニーズに即した専門的アドバイスを行うなど、支援活動を展開したことだ。
地震の場合、住まいを修理するか、解体するか、住み続けるかなど、その選択に対する被災者の悩みは大きい。
堀之内地区で出会った一人暮らしの女性は築30年に満たない住宅が、応急危険度判定で赤紙を貼られ「知り合いの建設業者に相談したら、修理するには基礎から取りかえるなど、大掛かりな工事が必要で莫大な資金が必要と説明された」と肩を落としていた。
こうした中、新潟市内の建築士らで活動する「建物修復支援ネットワーク」では、早い段階から、建物の修理に関する相談会を開くなど、支援を本格化させた。
地震の被災地では、行政などが損壊住宅を応急判定し、危険度の高い順に、赤、黄、緑の表示を貼るが、これは、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や、外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止することを目的としたもの。しかし、赤紙判定を貼られた人の中には、修復不能と誤解されてしまうこともあるという。
建物修復支援ネットワーク代表の長谷川順一氏は、「大切なのは、被災した建物を再生するのにどのような手法があるのか、トリアージをして処方箋を示してあげること」と話す。その上で、かかりつけの工務店や建築士とも相談して、「予算に応じて化粧部はあきらめてもらう」「構造補強だけはしっかりやる」など、被災者の状況に応じた対策案を出してあげることが大切だとする。
今回の地震で長谷川氏は、降雪による二次被害の拡大も懸念されたことから、2段階での対策を提案した。まずは、雪下ろしができる程度の応急補強対策をすること。「家がつぶれないで済めば、春になってからでも、どうするかゆっくり考えることができます」(長谷川氏)。
被災建物の修復は、責任が伴うため、建築士や工務店も金額を大目に言ってしまうなど、正しい状況判断がしにくい。長谷川氏は「建設事業者と住民の間に立って、対策の方策を検討してあげることが大切。今回は早い段階からいい形で関わることができたのでは」と話している。
C+Bousai vol2の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方