症状・診断

ウイルスに感染してから発病するまでの潜伏期間は2日から最長3週間といわれています。しかし、ウイルスに汚染した注射器の針刺しなどで感染した場合の潜伏期間は短く、接触感染の場合には長くなる傾向があります。

エボラ出血熱の一般的な症状は、突然の発熱、強い脱力感、筋肉痛、頭痛、のどの痛みなどに始まり、その後、おう吐、下痢、発疹が出現するものです。肝機能および腎機能の異常も伴います。症状が重くなると、出血や意識障害が出現します。結膜充血などの急性眼症状は発熱などの他の症状と合併して出ます。検査所見としては白血球数や血小板数の減少、および肝酵素値の上昇が認められます。

肝臓でウイルスが増殖し、そのため肝臓が腫れて、右季肋部(横隔膜の高さの肋骨辺り)の圧痛(強く押されるような痛み)や叩打痛(背中の肋骨と脊椎が三角に交わる三角部をたたくと感じる骨に響くような痛み)が特徴的な症状となります。死亡率は高く、90パーセントに達することもあります。

病原診断

血液、咽頭拭い液、尿がウイルス検査材料です。ウイルス遺伝子の検出、ウイルス抗原の検出が行われ、さまざまな抗体検出法も実施されます。血液、体液などからウイルスを分離する検査法も重要ですが、通常1週間以上かかります。日本国内では、国立感染症研究所村山庁舎が病原診断担当機関になっています。

治療

承認された治療薬はありませんが、コンゴでは集団発生が起きているため、研究段階にあるいくつかの薬剤が人へ投与されています。しかし現時点では、対症療法が基本となり、特に輸液管理が重要となっています。

予防

研究用に使用されているワクチンはありますが、承認済みのワクチンはありません。予防を考える上で、以下の事柄を考慮する必要があります。すなわち、免疫応答や炎症反応などが起こりにくい精巣、眼球内部および中枢神経系においては、エボラ出血熱回復後にもウイルスが存在し続けた事例があった。また、エボラ出血熱治療後9カ月目に、エボラウイルスが原因で遅発性の急性脳髄膜炎を発症した症例もあった。これらの事例は、患者が回復した後も、ウイルスは長期間体内に潜み続けることがあることを示唆しています。

エボラウイルスに感染しないようにするためには、流行地域に行かない、たとえ行っても野生動物に直接触れない、その肉を生で食さないことなどが重要です。流行地では、患者の体液(排泄物を含む)や、患者が触れた可能性のある物品に直接触れないようにすることは重要ですが、せっけんなどでのこまめな手洗いなども有効です。