2019/08/20
知られていない感染病の脅威
日本が現在採用しているエボラ出血熱防疫対策
厚生労働省は、2019年7月以降、エボラ出血熱の流行が起きているコンゴ民主共和国(コンゴ)またはウガンダ共和国(ウガンダ)からの渡航者を中心に、以下のような方策をとり、主として水際作戦によりエボラウイルス国内侵入防止およびエボラ出血熱防疫に組織的に取り組んでいます。
2.船舶に対する検疫について、最初の無線検疫実施の際、船舶の長に対して、「エボラ出血熱に関する質問票」に必要事項を記入して検疫所長に提出するよう求めている。 船舶の長から提出された「質問票に対する回答」から、到着前21日以内にコンゴまたはウガンダに渡航または滞在したことがある者のいることが確認された場合、その船舶に対する検疫は、臨船検疫または着岸検疫により念入りに実施される。
3.航空機に対する検疫について、発熱者発見のためのサーモグラフィーによる体温測定を到着空港内で行い、さらに、コンゴまたはウガンダの国籍者は、検疫官に自主的に申し出るよう働きかけている。
4.エボラ出血熱の非流行地から来航した船舶および航空機であっても、到着前 21 日以内にコンゴまたはウガンダに渡航または滞在したことがある乗組員または乗客を確認した場合、一定の期間を定めて仮検疫済証(一定の監視期間を設けて、上陸および貨物の陸揚げなどを許可する証明書、ただし期間内に患者などが発生した場合には取り消される)を交付している。
5.検疫官は、乗客名簿を確認し、コンゴまたはウガンダ国籍者の有無をあらかじめ確認して、コンゴまたはウガンダ国籍者に対しては、パスポートなどを確認しながら、到着前21日以内にコンゴまたはウガンダに滞在したかどうかを尋ねた上で、到着前21日以内に当該国に滞在していないことが確認された場合には、「検疫所確認済書」を手渡している。
6.到着前21日以内にコンゴまたはウガンダに渡航または滞在していたことが確認された場合、検疫官による聞き取りを行い、必要に応じて診察を行い、臨床症状の有無(針刺し・粘膜・傷口への曝露などで直接ウイルスの曝露を受けていないことの確認も含む)、疑い患者を含むエボラ出血熱患者との直接および間接接触の有無を確認する。エボラ出血熱に感染したおそれがあると判断された場合に限り、停留の措置(検疫法に基づき、患者だけでなく、感染のおそれのある者も入院や宿泊施設への収容をすること)がとられる。
7.到着前21日以内にコンゴまたはウガンダに渡航または滞在していたことが確認され、さらにエボラ出血熱患者と何らかの接触があった場合またはエボラウイルスの暴露を受けたことがあった場合には「健康監視」を実施する。すなわち、日本国内における居所および連絡先、氏名、年齢、性別、国籍、職業、旅行の日程、当該者がエボラ出血熱の病原体に感染したことが疑われる場所について報告を求め、その上で、「健康監視対象者用指示書」を手渡し、コンゴまたはウガンダ出国後(接触の可能性のある日が特定できる場合は当該日)504 時間(21日)内において、1日2回(朝・夕)の体温その他の健康状態について報告を求めている。「健康監視」の期間中、健康状態に異状を生じた場合、自宅に待機させ、その他エボラ出血熱の予防上必要な事項を指示し、居所の所在地を管轄する都道府県知事に、当該者の健康状態および当該者に対して指示した事項を通知する。
8.到着前21日以内にコンゴまたはウガンダに渡航または滞在していたことが確認されても、健康に以上の認められなかった場合には「健康カード」が手渡される。
エボラ出血熱と診断された場合、ただちに特定感染症指定医療機関または第一種感染症指定医療機関入院となります。当連載の第2回を参照にしてください。
■これだけは知っておきたい感染症の基礎知識
https://www.risktaisaku.com/articles/-/16120
詳細は、検疫所にお尋ねください。
日本国内にエボラウイルスが侵入する機会は限定されますが、アフリカから持ち込まれた貨物、物品のウイルス消滅のための徹底的な消毒も必要と思われます。
(了)
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