2016/07/25
誌面情報 vol56
社員・家族に会社を開放
西川社長は、16日の時点で、被災した社員や家族らに対して会社を開放することを決定。社長自らも本社に連日泊まり、再開に向け陣頭指揮を執り続けた。
週が明けて18日~20日までは経営層を中心に、何から手をつけるのか、どう工事を進めるのか、コールセンター業務や生産をいつからどう再開させていくのか協議を続け、21日から集まれる人だけ全員出社させることを決めた。
家を失ったり、家族がケガを負った人も何人もいた。「犠牲者がいなかったとか、大きなケガをした人が出なかったから良かったというレベルの話ではなく、苦労して新築をした直後に家が全壊で住めなくなった人もいれば、購入したばかりの車が潰れたり、知り合いにご不幸があったりいろんな人がいます。それぞれの立場で被災の重さは違っています。ただ1つ共通して言えることは誰一人楽しいなんて人はいなくて、皆つらい状況だったということです」(大庭氏)。
皆さんの安全はしっかり守る
21日朝9時、全社員の半数にあたる500人ほどが本社に集まった。「全員ジャージ姿で、女性の方も化粧すらできていない様子でした。水もガスも止まった状態で、1週間、お風呂に入れていない人も多かったのでしょう」。
社員を前に西川社長が話した言葉は「この地震により、自分たちの生活は一変した。しかし、企業の責任として、社員の安全や雇用をしている以上、社員・家族の生活を何としても守らなければならない。一方で、企業は、営業をしなくては給料を払い続けられない。絶対に皆さんの安全をしっかり守る。会社としてできることは可能な限りする、だから皆さんに会社に出てきてほしい」という内容だったという。社長の話を聞きながら皆が涙を流していたと大庭氏は振り返る。
同日、すべての社員に見舞金として、夏の賞与相当額を最高評価で支給することを宣言した。
復旧に向け、最初に取り組んだのは、社員の被災状況のヒアリングだった。安否確認のようなシステムで集計した数字ではなく、家族一人ひとりの様子や、家の状況、現状の悩みなどを人事チームが中心となり細かく聞き取っていった。特に出社できない社員については、どんな問題があるのかをできる限り細かく把握し、会社としてできる支援はないかを併せて検討していった。連絡がつかない人には、親しい社員から連絡をとってもらうなどあらゆる手段を使った。
被災した社員へは見舞金を支払い、家が被災した社員には寮に引っ越してもらったり、不動産会社を紹介した。独自の低金利融資制度も行った。学校や幼稚園が休みになっていることから、会社が運営する専用保育園に小中高生も受け入れた。



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