旅行者の感染リスク

日本などの黄熱の発生していない国から黄熱ウイルス汚染地域に旅行する人の、黄熱ウイルスに感染する危険度はさまざまです。すなわち、免疫状態(黄熱ワクチンを接種したか否か)、旅行する場所、季節(感染する恐れの高い期間であるか否か)、旅行中での仕事の内容(屋内での作業か屋外での作業か)などさまざまな旅行者の活動内容、旅行時における現地のウィルス汚染状況などが関与してきます。

ある地域での黄熱患者数は、その地域での黄熱ウイルス感染危険度の主要な尺度になります。しかし、その地域で報告されている黄熱患者数が少ない場合、地域住民の多くがワクチン接種をすでに受けているか、逆にその地域における黄熱サーベイランスシステムが機能していないという真逆のケースがあります。この「黄熱患者数が少ない」ことは、黄熱ウイルス感染危険度が低いことに必ずしもつながらない場合のあることを認識しておく必要があります。従って、黄熱に罹患する恐れのある国あるいは地域へ、黄熱ワクチンを接種せずに旅行することは危険です。

西アフリカ農村部での黄熱ウイルスに感染する危険度は季節によって異なります。雨季の終わりと乾期の初めの期間(通常7~10月)に感染する危険度は上がります。乾期でも人口の密集した都市部や一部の農村部で一時的に起こることがあります。

一方、南米で黄熱ウイルスに感染する危険度はアフリカより低いのですが、雨季(1〜5月で、2月と3月に発病のピーク)に最も高くなります。発病者の多くは、農村部よりも都市部で見られる傾向があります。南米での黄熱ウイルス感染リスクがアフリカより低い原因として、サルとの間でウイルス感染環を成立させている、南アメリカの森林に生息する蚊が、人に接触する機会をあまり持っていないためと考えられています。また、南米に住む黄熱発生地域住民の多くはワクチン接種を受けており、そのおかげで黄熱ウイルス感染リスクが低くなっているようです。

いずれにしても、危険度の高い地域に出かける場合には、あらかじめ十分な予備知識と準備をすることが肝要です。

(了)