2016/08/10
防災・危機管理ニュース

日本政策投資銀行(DBJ)は、防災および事業継続への取り組みが優れた企業を評価・選定し、その評価に応じて融資条件を設定する「DBJ BCM格付」を5年ぶりに大幅改訂したと発表した。新格付のもと、8月9日付けでアルプス電気株式会社(東京都大田区)と日本自動車ターミナル(東京都千代田区)にそれぞれ融資を実施した。
DBJ BCM格付融資は、DBJが開発した独自の評価システムにより、防災および事業継続への取り組みが優れた企業を評価・選定し、その評価に応じて融資条件を設定するという、「BCM格付」の専門手法を導入した世界で初めての融資メニュー。平成18年4月に運用を開始した前身の防災格付は、平成23年8月に東日本大震災やタイの洪水災害を機に「DBJ BCM格付」へと改訂した経緯がある。
BCM格付主幹の蛭間芳樹氏は「頻発する危機事案や災害レジリエンスに関する国際的な動向を踏まえ、大幅に評価内容を改訂しました。防災面では、人命安全確保に関する取り組みを再考し、安全配慮義務や地域防災との連携の設問群を拡充しました。また、BCM面では、事業継続上の様々なリスクへの包括的な対処や、中長期的なサスティナビリティを支える企業の危機管理経営力の高度化を目的に改訂を行ないました。危機対処のための財務戦略、サプライチェーンの冗長性確保、実効性を高める訓練の実施、ステークホルダーとのリスク・クライシスコミュニケーションなどは未だ多くの企業で手がつけられていませんので、共に高度化を目指していきたい」と話す。
日本政策投資銀行によると、「DBJ BCM格付」に基づく融資実績は233件、2825億円にのぼる(平成28年3月末時点)。世界経済フォーラム(ダボス会議)、国連防災世界会議、APECなど国際機関においてもレジリエントな社会の実現に資する金融商品として、高い評価を得ている。昨年からは本商品の海外展開を視野に入れ、フィリピン国で国際協力機構(JICA)との調査も始まっている(DBJ広報HPより)。
改定のポイントは、経営者のリーダーシップ、従業員の命を守る企業としての安全配慮義務の徹底、経営におけるリスク管理方針の策定、網羅的なリスク把握と優先的に管理するリスクの特定、財務影響評価を含むBIAの実施、リスク・コントロールとリスク・ファイナンス双方からの危機対処策の戦略検討、危機対応の実効性を高める訓練の実施、ステークホルダーとのリスク・クライシスコミュニケーションの観点を充実さたという。

「DBJ BCM格付」に基づく融資の詳細は日本政策投資銀行ホームページで公開されている。
アルプス電気株式会社
http://www.dbj.jp/ja/topics/dbj_news/2016/html/0000022850.html
日本自動車ターミナル株式会社
http://www.dbj.jp/ja/topics/dbj_news/2016/html/0000022851.html
(了)
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