2016/08/24
防災・危機管理ニュース
一般財団法人日本気象協会(本社:東京都豊島区)は、話す力・伝える力を持ち、高い防災意識と幅広い気象知識を有する専門性の高い気象予報士を育成することを目指し、7月22日から「気象防災キャスター」育成制度を新たに開始したと発表した。激甚化する気象災害や自然災害を解説でき、極端気象時代に対応できる新しいタイプの気象予報士を育成していく。
通常時は気象番組への出演、気象解説を行い、災害発生時など有事の際は各放送局の気象センターに気象の専門家として常駐し、報道原稿作成、取材対応、視聴者・聴取者への情報提供などを継続的に行うことができる「気象キャスターであり、防災の専門家」としての人材を育成する制度。
話す力・伝える力に加え、気象予測や日射量・レーダー関連の気象観測経験、防災行政知識、暦の知識、生活気象などの広範囲な知識と経験を積むことができるカリキュラムを用意した。気象予報士としての自身の能力をさらに拡大・深化させることができる。
近年、これまでの気象の知識や経験、ノウハウでは説明できないような極端な気象災害や自然災害が多発してきており、国もこのような状況を「新たなステージ」として捉え、対応策を検討している。放送局や新聞社などのマスメディアや地方自治体の防災対応部門などは民間気象会社に対し、話す力、伝える力を持ち、予報業務や観測業務の実地経験を踏まえた高い専門性と防災意識を有する気象予報士の派遣を要望する機会が増加している。
1950年設立の日本気象協会は、気象情報サービスのパイオニアとして、気象データの調査解析や気象観測などのフィールドワークを通じた豊富な経験と知見を有する。全国主要都市に拠点を持ち、気象観測や気象予測以外にも、防災や環境エネルギー分野での法人向けコンサルティング業務やコンシューマ向けビジネスを実施するなど、幅広い事業展開を行っている。社会からの新しいニーズに対応するため、同協会が保有する人的、物的資産を総動員し、「気象防災キャスター」を気象予報士の新しい姿として、世に送り出していく。
「気象防災キャスター」のカリキュラムについて
■気象予測の専門家として予報業務、観測業務へ従事
原稿作成の方法や言葉の使い方、しゃべり方の基礎などを、マスメディアでの気象キャスター経験を持つ人物が指導。日々の気象予測資料の読み方や気象の専門資料の入手方法の習得など、自らが予報し、自らの言葉で伝える能力を身につける。気象観測を実施している現地にて実習を行うことで、観測の現場でのさまざまなノウハウを蓄積する。
■講座形式での知識向上
現代の予報の基礎、防災行政の基礎、日射量やレーダー関連の知識、観測の実態等に関する勉強会などを開催。
【講座内容】
合計30講座を予定
気象
○レーダーや気象衛星の基礎知識理解、気象観測概論と実習、数値データによる気象検討
キャスター
○気象キャスター実演OJT(On-The-Job Training)、キャスターとして自立できる基礎能力の習得
防災
○自治体連携、地域防災計画の理解、各種インフラ管理と災害概論
環境/インフラ管理支援
○環境アセスメント
○河川やダム管理、道路管理
エネルギー
○火力、ガス、太陽光、風力などエネルギー分野と気象との関係性理解
生活
○生活気象、暦の基礎知識(二十四節気や各種指数情報)
ビジネス創造
○気象を軸とした新規ビジネス創造、コンシューマビジネスの企画・運営 など
(了)
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