普通のクルマで大容量は無理

次に、シガーソケットを利用して、家庭と同じ100Vの交流(AC)を取り出す方法をご紹介します。シガーソケットに差し込むタイプのインバーターを利用すれば、クルマの12Vを、家庭と同じ100Vの電源に変換することができ、いつも使っている家電製品が使えるようになるのです。

↓インバーターは、たとえばこんなのです。

電気の取り出し口がAC100V用のコンセントになっているので、家電製品が使えます。ただし、シガーソケットを利用するタイプのインバーターですと、実際に使える電力の量は、クルマ側のヒューズの容量によって決まってしまいます。たとえば、インバーターの出力が300W(ワット)でも、シガーソケットに使われているヒューズが15A(アンペア)だと、15A×12V=180Wとなり、180W以上の電力を使うと、クルマに付いているヒューズが切れてしまうのです(クルマのヒューズの容量は、取扱説明書か、ヒューズボックスのふたの裏に書いてあります)。

上の写真はクリップでバテッリーにも直接つなげるタイプのものです。これがついていたらバッテリーにつなげることができます。

バッテリーに直接つなぐタイプのものなら、1000Wぐらいまで使えるものもありますが、アイドリングで発電できるのは、乗用車だと大きなクルマでも500W程度、小型〜中型車では300W程度なので、それ以上の電力を連続使用するとバッテリーが上がってしまいます。ですから普通のクルマなら、アイドリングは300Wが上限と考えたほうがよいでしょう。冷蔵庫などモーターを使用する製品は、起動するときに大きな電力を消費しますから、500〜1000Wのインバーターを買っておいて起動時の大電力に備え(このときはバッテリーからの持ち出しになります)、運用時には300W(アイドリング時の概ね上限)に抑えるという使いかたもありかもしれません。

では、300Wでどの程度のものが使えるかといえば、LED照明器具が5〜10W、蛍光灯が40〜100W、冷蔵庫が200W前後、パソコンが50〜100W程度、扇風機が50〜60W、液晶テレビが150W前後ですから、災害時の優先順位からすると、冷蔵庫とLED照明器具数点を使用するのがせいいっぱい、というところではないでしょうか。昼間は照明器具を消して扇風機を動かすことはできます。ただ、気温が高いと熱中症対策としては、不安もあります(※医療機器を使用する場合、インバーターは「純正弦波」タイプを使用しないと正常に作動しない場合があります)。

真夏や真冬に停電した場合、冷暖房器具が使えるか否かは重要なポイントとなります。石油ファンヒーターは、点いてしまえば消費電力は100W前後ですが、点火するときに300Wを越えるものもありますから、300Wのインバーターが使用できるかどうかは微妙なところです。エアコンは家庭用でも200Vで動いているものがほとんどなので、残念ながら100Vのインバーターでは動かすことはできません。

洗濯機も500W以上消費するものがほとんどですから、使えないと思ったほうがいいでしょう。ホットカーペットや炊飯器など、熱を発生させるものも、300Wでは使えないと思ったほうがいいです。炊飯は、鍋と火力でもできるように備えたいですが、最近は「火が怖いし、使った事ない」という声も多くお聞きします。