■利益に繋がるネタを求める中国企業

それだけの経費と苦労を掛けやってきた日系企業を待ち受ける現地の来場者はどんな人達なのでしょうか?

彼らが求めているものは以下のようなものです。

1.売れそう、利益に繋がりそうな技術や商品がないかを探して
2.良い技術や商品があれば、独占的な契約を結ぶために
3.自社の工場での生産や自社の商品を使ってくれる日系企業は無いかを探して
4.中国進出希望の企業をサポートする仕事を斡旋するために
などとなります。

いかがでしょうか? 想像通りでしょうか? それとも意外でしたでしょうか?

しかしながら、上記のリストに加えねばならない上積み条件が一つ存在します。それは、「短期間に。すぐに結果が出る。簡単に。」という頭文字をつける必要があるということです。

展示会に来場してくる人たちの中に、「出会った企業と長期的な次元での付き合いを求めている人」は厳しい言い方とはなりますが「皆無だ」と思ってください。彼らはビジネス成就、つまり利益を上げることを第一として来場しているのです。技術や商品の善し悪しよりも「いかに短期間に、少ない経費と労力を使って、より多くの利益を上げることができるか?」に視点が置かれています。

ですから、出展企業の情報や技術が自分の持つ関係の中で利益という花が咲くかどうか? が鍵なのです。いくら彼らに熱心に技術や製品の良さを説明したところで、結局のところ最後の質問は「これはいくらですか?」「中国で売るときは幾らで輸入できますか?」「中国で安く作る事はできますか?」などとなっていくのです。彼らはほとんど技術うんぬんには関心がありません。よって、出展企業の日本人担当者の多くがこれらの質問に対する免疫ができておらず、ほとんどの場合両者の会話は次元が違いすぎて平行線となり結論を見ることはまずありません。

また「商品に関心を持ちましたからぜひサンプルを欲しい。」と熱心に言われ格安でサンプルを渡したり、「自分の持つ工場でもこれを使用したいから、後日ぜひ来てほしい。」という熱心な誘いに勝手に希望を抱いてしまい(中国人は言葉巧みに自分の背景や持つ力を誇示するため)、帰国後に再度現地を訪問するなどの交流を続けたりといったこともよくある話です。

しかしながら、それらのほとんどは何ら結果をもたらさず、ただただ時間と経費をかけてしまう結果となり、「中国人にうまく口車に乗せられた」とか「騙された」などと言う言い訳を伴った形で、「中国進出の夢」は果ててしまう事が往々にして繰り返されてしまうのです。

日本には未だに多くの中小企業が存在します。跡取りがいない企業も多く、せっかくの技術の活かせる場所は無いかと期待に胸を膨らませて、中国市場を目指してくる企業も引き続くことでしょう。

しかし、これまでの経緯を見る限り、日系企業が中国現地のビジネスに入り込み成果を上げるという目的に絞って言えば、展示会への出展はほとんど効果がないというのが現実です。

リスクを取らねばビジネスは成功しないという鉄則があります。しかし、取るに足らないリスクは避けて通るべきでしょう。ならば、中国ビジネスにおいてはどんなリスクを取るべきなのでしょうか? それは今後引き続き当コラムにて追求していきます。

(了)