市民参加型消防防災運動会
「まもりんピック姫路」

「まもりんピック」は、もともと石見市長の「防災訓練は必要だが、もっと市民が楽しくできないか?」という視点から始まったもの。それまでは「市民防災のつどい」として屋内で開催されていたものを、2006年度に会場を屋外に移し、防火防災関係団体や事業所を対象に運動会形式で実施したところ大好評だったことから「市民も一緒にできないか」と検討を始めた。

より運動会を魅力的で効果的なものにするため、石見氏は建設省建築研究所時代の同僚であった都市防災の専門家である梶秀樹氏(現・筑波大学名誉教授)に競技種目案も含めた検討を依頼。その結果として、「さまざまな災害を想定した消防防災競技やゲームを通じ、市民と行政が一体となって取り組み、防災意識の啓発と相互の連携からお互いをたすけあう力を養うための消防防災運動会」として2008年、「まもりんピック」が誕生した。

市内全域を消防署単位の5ブロックに分け、各自治会を単位として各ブロックごとに予選会を開催。本大会は市民2439人が参加したという。この取り組みは全国的にも評価され、2008年度の「防火まちづくり大賞」総務大臣賞も受賞。現在ではほかの地域でも「まもりんピック」が開催されるまでに至っている。

昨年は「ちびっ子まもりんピック」も開催した。保育園の子どもたちが参加し、バケツリレーやぬいぐるみを運ぶ「けが人搬送リレー」、綱引きなど、子どもでも楽しく防災を学ぶことができるようにした。一般部門も合わせ、予選を勝ち抜いた1600人が本選に参加し、競技を通じて防災を学んだ。「まもりんピック」は確実に地域に根付いた行事に成長している。

「『まもりんピック』という名前は市役所の職員のアイデアなんですよ」と石見氏は顔をほころばせる。

子どもから大人まで、町が一体となる「ちびっ子まもりんピック」「まもりんピック姫路」

身近なリスクに備える

姫路市には、実は身近なリスクも潜んでいる。その中の1つが海沿いの工業地帯にある大規模コンビナートだ。2012年には大手化学品製造企業の工場内で爆発事故が発生。消防職員1人が死亡し、36人が重軽傷を負った。そのほかの企業の工場でもボヤ騒ぎなど、消防が出動する回数は少なくない。

石見氏は「南海地震では津波が心配されている。地震発生から到達するまでは2時間で、予想最大津波高2.5メートルとそれほど大きくはないが、それでも工場には危険物も貯蔵されているので、万全な対策をお願いしている」とする。

また、2014年の広島土砂災害では山沿いの新興住宅地が被害に遭った。姫路市内にも新興住宅地が存在するため、消防署には特に地震、火災、洪水などさまざまなシナリオでの訓練を依頼しているという。

「2013年には淡路島でマグニチュード6.3の地震が発生し、姫路市内にも津波注意報が出た。それなのに近所の川で遊んでいる子供がいた。もっともっと防災については真剣にとりくんでいかなければいけない」と、石見氏は市長というより子供を見守る親のような視線で話す。