経営陣の共通認識は重要

図1は11種類のリスクに関して、今後5年間において自社のビジネスに対する今後の影響度の変化(注4)がどのように認識されているかをまとめたものであり、右側の「CHANGE」の列にある矢印が上向きのものは、今後の影響度が増加すると思われていることを示している。全体的に上向きのものが多いが、本報告書では特に「データおよび新しいテクノロジー」「データの取扱いにおける倫理」および「サステイナビリティ(ESG)」の3つについて変化が大きいことに注目されており、取締役や役員、監査役が今後これらに対する理解を深め、対応するための施策を導入すべきであることが説かれている。

写真を拡大 図1. 様々なリスクが今後の自社のビジネスにおよぼす影響がどのように変化すると考えられているか (出典:IIA / OnRisk 2020: A Guide to Understanding, Aligning, and Optimizing Risk)

また図2は、前述の3種類のリスクのうち「サステイナビリティ(ESG)」に関する、取締役、役員、監査役の認識度合いを図示したものである。縦軸・横軸の意味は本稿のトップに掲載した図と同じであり、図中にプロットされているAが監査役、Bが取締役、Cが役員の認識度合いを示している。

写真を拡大 図2. サステイナビリティ(ESG)に関する取締役、役員、監査役の認識度合い(出典:IIA / OnRisk 2020: A Guide to Understanding, Aligning, and Optimizing Risk)

図からは、監査役の方々のこの分野に関する知識が、取締役や役員に比べて若干低いように読み取れるが、「サステイナビリティ(ESG)」は比較的新しい分野だということもあり、実は他の10種類のリスクと比べると全体的に知識が低めとなっている。このような状況から本報告書においては、「サステイナビリティ(ESG)」に関しては前述の4つの段階のうち「Recognize(認識)」から「Explore(探索)」に移行している状態であろうと評価されている。

本報告書では他の10種類のリスクに関しても同様にグラフが示されており、それぞれのリスクに関する取締役、役員、監査役の認識度合いと、これらに対してどのように取り組むべきかが示されている。基本的に取締役、役員、および監査役の三者はそれぞれ独立した立場で役割を果たすべきであるが、リスクに対する理解や認識の度合いが大きく異なると様々な弊害を招きかねないため、これらについて共通認識を持つための情報共有やコミュニケーションは不可欠である。本報告書は企業活動を取り巻く様々なリスクについて、このようなユニークな観点からの示唆を与えてくれる。

■報告書本文の入手先(PDF40ページ/約9.5MB)
https://dl.theiia.org/AECPublic/OnRisk-2020-Report.pdf

注1) 同協会は1941年にフロリダで設立され、現在は170以上の国または地域に 20万人もの会員を擁する非営利組織である。 http://www.globaliia.org/

注2)「C-suite」とは CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)、CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)などといったように、役職名に「Chief」が付く上級幹部役員の総称である。

注3)「CAEs」は Chief Audit Executives の略。筆者はこの報告書を読むまでこのような役職名を知らなかったが、北米地域では一般的なのかも知れない。

注4) 原文では「relevance」と表記されており、これには「関わり」「関連性」「適用可能性」「妥当性」などの意味があるが、本報告書の中ではそれぞれのリスクが自社のビジネスに影響を与える度合いとして用いられているようであるため、本稿においては「影響度」と表記することにした。

(了)