2016/11/25
直言居士-ちょくげんこじ
第十回 株式会社河本総合防災代表取締役社長 伊藤隆夫氏
「防災商品も、顧客志向が求められている。単にありものを紹介するのではなく、オリジナル商品を展開していくことが大切」と話すのは、株式会社河本総合防災代表取締役社長の伊藤隆夫氏。
同社は1957年に消火器の製造・販売業として河本製作所として創業。1962年に総合防災業を営むべく現在の会社を創立した。2012年に事業継続マネジメントシステムの国際規格であるISO22301を総合防災企業として世界で初めて取得。現在取り扱う防災関係の商品点数はおよそ1万点にのぼる。伊藤氏はもともと他の防災メーカーに勤めていたが、現会長の河本俊二氏の経営方針や人柄に魅かれ同社に入社。昨年から代表取締役を務めている。
伊藤氏が現在力を入れているのは、分散型のオリジナル備蓄商品の開発だ。「どんなに備蓄を整備しても、例えば備蓄がビルの地下にあったらいざというときに役に立たない可能性が高い」と考え、防災士とともに開発したのが「3Daysライフカプセル」。A4サイズで奥行き75mmの箱の中に保存期間5年の非常食や簡易トイレなど、災害時の3日分の必須アイテムを厳選して収納した。オフィスの棚や引き出しにピッタリ収まるファイルサイズで好評を博している。顧客からの要望に応え、「1Day+ライフカプセル」「Lady’s+ライフカプセル」などのラインナップも揃えた。
伊藤氏は「最近は他社でも同じような商品が出てきたが、業界で最初に開発したのは当社」と胸を張る。最近では災害時のトイレ問題に着目し、トイレの中に簡易トイレを備え付ける「レスキューパックトイレ」も開発した。「備蓄はできるだけ使う場所のそばに配置したほうがいい」という考え方のもと、これからもオリジナル商品の開発に力を入れていくという。
一方で、同社は社会貢献活動にも積極的だ。2009年より国連世界食糧計画(WFP)の学校給食プログラムに賛同。また東日本大震災の復興を願い「がんばろう日本」バージョンの消火器の販売を開始し、ともに消火器の販売本数に応じた寄付を行っている。
伊藤氏がいま最も懸念していることは、首都直下地震などの大災害が発生した場合に総合防災企業としての責任を果たすためには、サプライヤーや提携している協力会社のさらなるBCPの強化が不可欠であること。同社ではかねてから、ホームページで企業の災害対策マニュアルの簡易策定方法が無料で閲覧できるようにしたほか、「期限管理forクラウド」(http://kigenkanri.jp/)ホームページを開設。備蓄品の期限管理システムを無料でデモ版を公開するなど、企業のBCP策定の取り組みを支援するためのツール開発に取り組む。
伊藤氏は「BCPは1社で取り組んでも限界がある。周りの企業を巻き込んで初めて、巨大な災害にも対応できるようになる。これからもBCPの重要性を伝えていきたい」としている。
(了)
直言居士-ちょくげんこじの他の記事
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方