2016/11/29
防災・危機管理ニュース

福祉施設と、そこで働く職員の災害対応能力の向上を支援することを目的に、一般社団法人福祉防災コミュニティ協会が11月25日に発足した。会長には、元宮城県知事で神奈川大学特別招聘教授の浅野史郎氏、代表理事は跡見学園女子大学観光コミュニティ学部教授の鍵屋一氏が就任した。
協会の目的は、福祉施設、職員の災害対応能力の向上と平時からの魅力増進。具体的な事業としては、①福祉人財と組織の災害対応能力の向上、②福祉防災認定コーチの養成、③安全・安心・魅力施設の認定、④福祉防災コミュニティづくりと維持・発展、⑤福祉施設の魅力増進(発掘)、⑥災害時の応援―を掲げた。
このうち、①については、福祉施設の防災・事業継続計画(BCP)研修や訓練を実施し、継続的なフォローアップを実施する。②については、福祉防災・BCP研修や福祉施設の防災対策を支援できる人財を養成する。③については、福祉防災・BCPを作成し、訓練、見直しなど良好なマネジメントができている福祉施設を認定する、などの活動を予定している。
同協会によると福祉施設は防災訓練を定期的に行っているものの、大災害での緊急避難や地域・社会への貢献まで視野を広げた本格的な危機対応には至っていない。実際に2013年3月の内閣府調査によると福祉施設のBCP策定率は4.6%と、全産業中、最も低かった。一方で、近年の大規模地震や水害など、危機対応を迫られる機会は増え、同時に近隣の要配慮者を受け入れる福祉避難所(第二次避難所)となることも求められている。
鍵屋氏は25日に都内で開かれた発会式のあいさつで、内閣府が2013年にまとめた「避難に関する総合的対策の推進に関する実態調査結果」について触れ「東日本大震災では、要援護者がどのような情報をもとに避難したかを聞いたところ、最も多かったのが家族など同居している人の判断で、次いで近所の人や友人など面識のある人からの連絡や声かけ、3位が福祉施設や福祉団体の職員、ケアマネージャー、ヘルパーなどからの連絡や声かけだった。東京では近所の力が弱いので、首都直下地震などに備え、ますます福祉関係者の力が必要になる。高齢者や障がい者が普段から、近所や福祉施設とつながりを持っていることが非常に重要」と語った。
協会顧問には、顧問には和洋女子大学学長の岸田宏司氏、東京都福祉施設士会会長の高橋紘氏、同志社大学社会学部教授の立木茂雄氏、明治大学大学院政治経済学研究科特任教授の中林一樹氏、防災科学技術研究所理事長の林春男氏、東京都市大学客員教授の原口兼正氏、兵庫県立大学防災教育センター長の室崎益輝氏、東京大学大学院生産技術研究所教授の目黒公郎氏が就任した。
鍵屋氏の話
(了)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2022/08/09
-
-
収入にゆとりのある世帯ほど防災が進む
リスク対策.comは、会社に勤務する従業員が家庭でどの程度防災に取り組んでいるかを把握するため、インターネットによるアンケート調査を実施。その結果、世帯収入によって備蓄や転倒防止などの備えとともに、地域防災活動への取り組みにも大きな差があることが分かりました。前回に続き、調査結果を報告します。
2022/08/07
-
部分最適の追求が招いた災害リスク極大化
膨大な帰宅困難者、エレベーターの閉じ込め、救助活動の混乱、行き場のない避難者と災害関連死――。首都直下地震の被災シナリオから見えてくるのは、ひとえに集中のリスクです。根本的な解決には分散が必要ですが、一極集中はいまなおとどまるところを知りません。なぜ分散は進まないのか。山梨大学大学院総合研究部の秦康範准教授に聞きました。
2022/08/03
-
-
-
サイバーインシデントの初動対応に関する基本的な知識の整理
本セミナーでは、サイバーインシデントの初動対応に焦点をあて、事前準備と対応について基本的な知識を整理し、今後の対策検討を推進する際に役立つ情報を提供いたします。2022年8月2日開催。
2022/08/03
-
-
新型コロナウイルスに感染した場合の労災補償
新型コロナウイルス感染症の感染者は、ワクチン接種の普及により、一時は減少傾向にありましたが、オミクロン株BA5の感染拡大により、感染者が急増し、令和7年7月28日には、東京都における感染者数が4万人を超えて過去最多となりました。 新型コロナウイルス感染症に感染すると、罹患後においても倦怠感やうつ状態、頭痛、めまい、味覚障害など、様々な症状が続くことがあり、それにより就労を継続することが難しくなり、退職を余儀なくされるケースも発生しています。業務により新型コロナウイルスに感染し、それにより働けなくなった場合は、労災保険給付を受けることができます。そこで今回は、業務に起因して新型コロナウイルスに感染した場合に受けられる労災補償について説明します。
2022/07/29
-
企業の新型コロナ対応における法的課題の振り返り
企業の新型コロナへの対応を法的側面から振り返り、次の大規模災害、あるいは新たな感染症の拡大時に向け、どのような対策が必要なのか弁護士の中野明安氏に解説していただきました。2022年7月20日開催
2022/07/28
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方