応急修理の支援を受けると、仮設住宅入居ができなくなるので、慎重な判断が求められます

比較的大規模で深刻な被害が発生したり、またその恐れがある場合には「災害救助法」の適用を都道府県が決定します。そして災害救助法が適用されている地域では、「住宅の応急修理」という支援を受けることができます。

住宅の応急修理とは、災害のため住居が「大規模半壊」「半壊」「準半壊」の被害を受け、そのままでは居住できない場合であって、応急的に修理すれば避難所などへの避難が不要となり居住可能な場合に利用が見込まれている、必要最小限の住宅応急修理制度です。

修繕の対象は、屋根、壁、床、台所、トイレなど日常生活に必要かつ欠くことのできない部分であって、より緊急を要する箇所など狭い範囲に限られています。また、運用上「半壊」や「準半壊」の世帯がこの制度を利用する場合には所得制限があります。

修理費用は「大規模半壊」と「半壊」世帯を修繕する場合には、一世帯あたり約60万円以内です。2019年10月以降の運用で、一部損壊(損壊割合20%未満)のうち「準半壊」(損壊割合10%以上20%未満)にも支援対象が拡大されましたが、支援される金額は一世帯あたり30万円以内です。

応急修理制度は、自治体が業者を派遣して直接修理するという支援(現物サービスとしての支援)です。修理費用の支援として運用上定められた約60万円または30万円という金額は、自治体が直接修理業者にその分の金額を支払うものです。被災された方に費用が支給されるものではありません。

ここで注意が必要なのは、先に自ら業者を手配して修繕をしてしまうと、その修繕は行政からの派遣による修繕ではないので、応急修理制度の支援対象外となってしまう危険があるということです。どのような手続きを踏めばよいのかは、災害が起きる都度、自治体のウェブサイトで必ず確認する必要があります。

ただし過去の災害では、工事が完了しても工事代金を払っていなければ住宅の応急修理制度の利用申請ができるという対応をしたこともあります。しかし、それぞれの災害で自治体が同じように対応するとは限らないので、修繕工事を申し込む段階では、必ず弁護士などに支援の利用についての相談をしてみてください。

応急修理を選択した場合は仮設住宅への入居はできません。災害救助法では応急修理をした以上は、住宅に住めるはず、という考え方があるからです(実際は「半壊」に至ってしまえば、60万円程度の修繕で住めるようになることはまずありえませんので、このような運用は批判が大きいところです)。住まいの選択というのはとても重要な問題ですので、制度の利用前によく考え、弁護士の無料法律相談を受けるなどして入居要件を確認してください。

なお過去の災害では借家について、所有者(賃貸人)が修理を行えず、居住者(賃借人)が居住する場所を失う場合には、所有者の同意を得て、居住者側で応急修理を行うことも可能とする取扱いをしています。

(了)