災害時の雇用保険の特例措置を必ず確認

大規模な自然災害により事業所が休止や廃止になった場合、会社としては、雇用していた従業員の退職(解雇)を検討せざるを得ない場合もあるかもしれません。

従業員が失職すれば、雇用保険の被保険者(従業員)として、雇用保険の基本手当(失業給付)の受給ができる場合もあります。しかし、従業員を失職させてしまうことは、極力避けたいものです。会社の事業継続マネジメント(BCM)の観点からしても、従業員を繋ぎ止めておくことは、事業再開を迅速に進める上でも重要です。

このような場合は、災害時の雇用保険の特例措置を思い出し、必ずハローワークや労働局へ相談するようにしてください。

「激甚災害法」の指定地域内の事業所が災害により休止・廃止したために、休業して給与を受けることができない従業員は、実際に離職していなくとも、基本手当を受給することができます。

「激甚災害法」が適用された地域とそれに隣接した地域では、災害により事業を休止・廃止したために、一時的に従業員が離職している場合は、事業再開後に再雇用を約束している場合であっても、従業員は、雇用保険の基本手当を受給できます。通常は再雇用が予定されていれば基本手当は支払われませんが、特別に認めているのです。

なお、令和元年台風19号において講じられた雇用保険の特例措置は、厚生労働省のウェブサイトでまとめられていますので参照してください。

『災害時における雇用保険の特例措置等について』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000134526_00001.html

これらの措置を適切に活用することで、従業員を実質的には雇用し続けたまま、会社としては給与の負担から免れ、一方で従業員は失業給付を受け取ることができるのです。被災地の復興に応じて事業の再建を助ける制度といえます。

なお、特例を利用するには、雇用保険に6カ月以上加入しているなど、一定の要件を満たす必要があります。また離職票などの書面も必要になります。会社のほうから積極的に制度利用の是非を確認し、従業員の支援を行うようにしましょう。

東日本大震災などでは、これらに加え、新卒者の緊急就労支援、緊急雇用助成支援なども行われてきた実績があります。どのような支援が行われているのか、常に動向をチェックすることを心掛けましょう。

(了)