2016/12/13
防災・危機管理ニュース
Kaspersky Labのグローバル調査分析チーム(GReAT)は7日、2016年のサイバー脅威について「ランサムウェアが世界中で猛威を振るい、高度化と多様化を遂げ、データとデバイス、そして個人と企業に対する影響力を強めた」と発表した。同チームは年次の動向レポートでその年の主要なサイバー脅威をまとめているが、この脅威の増大が非常に著しいことから、ランサムウェアを2016年の最重要トピックに位置付けた。
2016年のランサムウェア攻撃について「企業に対する攻撃:1月には2分間に1回だった攻撃が、10月には40秒に1回になった」「個人に対する攻撃:1月には20秒に1回だった攻撃が、10月には10秒に1回へと増加した」という結果が出た(同社レポート)。
特に注目すべきはRansomware-as-a-Service(RaaS:サービスとしてのランサムウェア)。ランサムウェアを独自に開発するスキル、リソースそして意思のないサイバー犯罪者にとって、RaaSは魅力的なビジネスモデルだ。コード作成者がマルウェアをオンデマンドで独自に改変したバージョンを販売し、利用者はそのマルウェアをスパムやWebサイト経由で拡散させ、被害者から得た身代金のうち一定の割合を利用料として支払う。結果的に利益を得るのはコード作成者となる。
世界の企業の5社に1社で、ランサムウェア攻撃に起因するITセキュリティインシデントが発生している。中小規模企業の5社に1社が、身代金を支払うもファイルは取らなかった。特定の業種は激しいランサムウェア攻撃を受けているが、標的対象は多岐にわたっていて、リスクが低い業種は存在しない。最も多くの攻撃を受けた業種は教育で23%、最も少ない業種は小売りおよびレジャーの16%。
また、2016年に初めて確認されたランサムウェア攻撃の手法に、ディスクの暗号化がある。少数ではなく全ファイルに対して一斉にアクセスをブロックまたは暗号化する手法で、「Petya」がその一例。「Dcryptor」(別名Mamba)はさらに一歩踏み込み、標的のマシンにリモートアクセスするために総当たり攻撃でパスワードを割り出し、感染させた後にハードドライブ全体をロックする。
そして「Shade」は、標的によってアプローチを変えている。感染したコンピューターが金融系サービス関連だと分かると、金銭搾取のためにスパイウェアをインストール。ソフトウェアの欠陥や身代金要求メッセージに誤植がみられるなど、低品質なランサムウェア型トロイの木馬が著しく増加した。こういった傾向により、被害者がデータを復元できない可能性が高まっている。
2016年は、新たに62のランサムウェアファミリーが確認され、官民が連携、団結してランサムウェアに対抗する動きがあった。7月に発足した「No More Ransom」は、法執行機関とセキュリティベンダーが協力し、大規模なランサムウェアファミリーをテイクダウンさせる非営利のプロジェクトで、現在、ユーロポール、ヨーロッパを中心とした14か国の警察機関が参加している。ランサムウェアの被害者に有用なリソースの提供を目的とし、複数の復号ツールをはじめ、ランサムウェアの危険性と対策に関する情報も公開。また、巨額の利益を生む犯罪者のビジネスモデルを弱体化させることも目指している。
(了)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方