2016/12/21
防災・危機管理ニュース
緊急地震速報アプリのパイオニア『ゆれくるコール』が、新機能「+ソナエ」でさらに進化
東日本大震災よりも以前。まだ「緊急地震速報」という名称そのものが世のなかに認知されていなかった2010年11月にリリースされた緊急地震速報アプリ『ゆれくるコール』は、iPhone・Andoroid端末を合わせて現在550万ダウンロードを誇る災害時の定番アプリだ。
なぜ、当時にあって緊急地震速報アプリを開発しようと考えたのか。その開発に至るまでの経緯と、将来の可能性ついてアプリの開発者であるアールシーソリューション株式会社代表取締役の栗山章氏に話を聞いた。
【ゆれくるコール紹介ページ】
http://www.rcsc.co.jp/yurekuru-c16se

「2004年に新潟県中越地震が発生し、故郷である新潟の祖母と久しぶりに会う予定が中止になった。ほどなくその祖母が亡くなり、結局会わずじまいになってしまったことを、当時は相当悔やんだ」と振り返るのは、アールシーソリューション代表取締役の栗山章氏。

その時は大手通信会社のシステム開発を手掛けていた栗山氏だが、06年にとある展示会で緊急地震速報を解析するシステムと出会ったことを機に、本格的なソフトの開発に着手する。
その後、07年10月の気象業務法改正で、民間企業でも気象庁から予報業務許可事業者の認可を受ければ緊急地震速報を出せるようになったことに伴い、現在の事業を開始した。
07年時点は建設会社や小売店などに向けて緊急地震速報を発報するシステムを開発していたが「より手軽に、どんな人にでも地震速報を受けられるように」とスマートホン向けのアプリ開発も始めた。
2010年10月にアプリをリリースしたところ、ほどなく大手通信事業会社の社長が「これは便利」とTwitterで発信してくれたおかげで、一気に3万ダウンロードを達成。その後に東日本大震災が発生し、世間一般に緊急地震速報の重要性が認識され、現在のロングセラーにつながっている。
栗山氏は「当社は、まだ防災・減災という言葉が一般になじみがなかったころから速報発表の仕組み構築に取り組んだ最初のIT企業。現在では緊急地震速報のパイオニアの1社に数えられている」と胸を張る。
実は緊急地震速報だけではない。『ゆれくるコール』はコミュニケーションツール

実は『ゆれくるコール』には緊急地震速報以外にもさまざまな機能がある。設定した地点の推定震度を地図上に表示し、地震の規模を直感的に見ることができる「震度マップ」。
直近10件分の地震情報を一覧で確認できたり、津波注意報・警報などを津波アイコンで表示したりする「地震情報・詳細」。利用者が登録した安否情報を地図上に表示する「安否確認」。自分が体感した「ゆれ」の大きさを「立っていられないほどゆれた!」などユーザーが自分の言葉で共有できる「ゆれ体感投稿」などだ。
栗山氏は「これらの機能は、地震から数時間たった後に周りにいる人と地震について話し合うために作ったコミュニケーションツールだ。例えば「ゆれ体感投稿」を見ると、後で「あそこが結構揺れたんだな」など、周囲の人とコミュニケーションをとることができる。地震は発生した直後に皆の関心が急激に高まる。その時に地震について振り返ったり、皆で話し合いをしたりすることは次の地震に備えるためにもとても大事なこと」とする。
また、栗山氏の「1人でも多くの人に利用してもらいたい」という想いから、視覚障がいを持つユーザーの声を生かしていち早く表示にユニバーサルカラーを取り入れたほか、通知音で地震の規模が分かるようにした。これらのことも、『ゆれくるコール』が業界の先駆けとなっている。
「+ソナエ」でふだんから防災力を高める
『ゆれくるコール』が今年11月に実装した新しいコンテンツが「+ソナエ」(※)だ。地震が発生した時に役立つ情報や、日ごろから確認したい防災知識をイラストで解説している。「+ソナエ」とは日常生活に「備え」という意識をプラスして、防災・減災意識を高めようというプロジェクトだ。「+ボタン」をタップすることでお気に入り登録が可能。また、ソーシャルメディアへのシェア機能も付いているために重要だと思った知識を家族や友人に共有することができる。

同社管理部で広報をつとめる鈴木理那氏は、「「+ソナエ」のコンテンツを普段から確認することで、災害発生時にどのような行動をとるかを家族や会社で考えるきっかけになれば」としている。
安心な未来を目指して進化する『ゆれくるコール』
『ゆれくるコール』が今後目指すのは、さらなるユーザーのファン化だ。現在は「緊急地震速報通知アプリ」として広く認知されてはいるが、日常的に毎日アプリを開くコアユーザーはまだまだ少ない。
現在は有料のプレミアムプランとして①緊急地震速報の「業界最速プッシュ通知」②地震情報を直近50件まで表示することができる機能③現在1地点のみの拠点登録を複数地点設定④広告の非表示-などのサービスを行っているが、栗山氏は「本当はもっと会員の皆さんの声をもとにパーソナライズなサービスを拡大するなどして、コアなファンを増やしていきたい。それが来るべき地震に対する防災や減災にも繋がっていく。これからも安心な未来のために、『ゆれくるコール』を進化させていきたい」と、将来への抱負を語ってくれた。
(※)「+ソナエ」は株式会社電通の商標です。
【ゆれくるコール紹介ページ】
http://www.rcsc.co.jp/yurekuru-c16se
(了)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
-
-
カムチャツカ半島と千島海溝地震との関連は?
7月30日にカムチャツカ半島沖で発生した巨大地震は、千島からカムチャツカ半島に伸びる千島海溝の北端域を破壊し、ロシアで最大4 メートル級の津波を生じさせた。同海域では7月20日にもマグニチュード7.4の地震が起きており、短期的に活動が活発化していたと考えられる。東大地震研究所の加藤尚之教授によれば、今回の震源域の歪みはほぼ解放されたため「同じ場所でさらに大きな地震が起きる可能性は低い」が「隣接した地域(未破壊域)では巨大地震の可能性が残る」とする。
2025/08/01
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方