愛ゆえに破滅をもたらす安全神話

安全神話パターンその２　山岳信仰系

私も山が大好きなので、山を信仰の対象とする心情には深く共感します。全国各地の山岳系安全神話にはこんなものがあります。

まずは、日本一の富士山。

静岡では、富士山は、方角を確認する際のランドマークにされるなど、愛されていると感じます。でも、山梨での富士山は、ニュアンスが違っている気がします。例えば、山梨では「霊峰富士」と呼ぶ方が多い印象です。さらに、「山梨側から見る富士山のほうが美しい」という声もよく聞きます。宝永噴火の跡が山梨側から見えないのも理由にあると言われています。

さらに、津波や地震被害が知られている静岡とは違って、山梨は、「霊峰富士」が、豪雨や強風、災害を防いでくれるという安全神話として語られる傾向があると感じています。

写真を拡大世界中の風の動きがわかるサイト　Windy.com

https://www.windy.com/?34.171,135.218,5

同じ印象を山梨大学大学院総合研究部（工学域・土木環境工学系）准教授・秦康範氏も赴任された時に持たれたそうです。

山梨に赴任してからいろいろな方々に、「富士山と南アルプスがあるから台風は来ない、山梨は本当に災害が少ない地域」と教えていただきました（笑）。しかし、気象の専門家に尋ねてみると、まったくの迷信であるとのことでした。実際調べてみると過去に大きな被害を受けていて、武田信玄の時代から水害の常襲地帯であることがすぐにわかりました。1959年8月台風7号はまさに富士川沿いに北上し、県内に90人の死者行方不明者を出す大きな被害をもたらしました。さらに、西から来た台風15号（伊勢湾台風）により、復旧途上だった地域はさらなる被害に見舞われました。自分の経験で考えるのではなく、過去や他地域の経験に学ぶことが大切だと思います。

この1959年台風については、2009年にシンポジウムも開催され、当時の被害状況の映像や、シンポジウム音声が下記のサイトで確認できるようになっています。

http://www.sannichi-ybs.co.jp/bousai50/symposium.html?fbclid=IwAR35j4DvNU9g-WAwn-7CgIhxf2AWeWEsos_GTj7E_Z7wdJbZScEe9Z2S27A#03

過去の被害はきちんと語り継いでいきたいです。

富士山と並び三霊山と呼ばれ、山岳信仰の盛んな山といえば、富山県の立山です。