2020/01/27
日本企業が失敗する新チャイナ・リスク
■ ある介護施設を運営する日系企業のローカライズ事例
さて、中国も日本に負けず劣らずの高齢化社会となりつつあります。これからは、高齢者を相手にしたビジネスも発展するとみられています。
これまでの中国の発展を下支えしていた方々もすでに多くが高齢者となり、人口に大きなウエイトを占めるようになりました。中国は日本に比べリタイヤの年齢が早いこともあり、今もなお元気な60~50代の人々は孫の世話ばかりでなく、海外旅行や趣味、運動などに時間を使うことが多くなっています。
つまり今後10~20年の間に、今まさに介護が必要な人たちと介護予備軍と見られる人たちによる介護市場の拡大が間違いなく訪れることになります。そうしたことも手伝って、日本の進んだ介護技術を中国に導入しようという試みが、すでにいろいろな方面で始まっております。
しかし、それらすべてがうまくいっているわけではありません。あるフランス大手が、自ら投資し土地を購入し施設を建て経営を行おうとしましたが、うまくいかずに結局撤退。二度と中国には投資しないという決断を下したことが知られています。
何が問題だったのか? それは中国という社会が「介護」に対してどういうニーズを持っているのかをしっかり把握できず、ミスマッチだったからです。
まず、中国の人口構造をよくよく知っておく必要がありました。14億もの人口を抱えているため、都市と地方の経済的な格差、文化的な差異、住環境・生活習慣の差異などが、他国と比べると大きいのです。
例えば、80~90代後期高齢者は昔から貧しい生活に慣れているため、お金を払ってサービスを受けることに躊躇します。60~70代の高齢者は一人っ子政策時代の親であるため、子供に(経済的な)面倒を見てもらうことなど最初から諦めています。またそれ以下の40~50代の介護予備軍は現代的な生活に慣れ親しんでいるため、自分たちが高齢者と言われる年代になったときにどうしたいかをよりオープンな発想で準備しているといえます。
そのため「後期高齢者の介護」といっても、果たして誰がお金を出し、どのようなレベルを求めているのかが、非常に複雑です。この難題に安易な回答は存在しません。
日本企業が失敗する新チャイナ・リスクの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方