横断的な取り組みが必要に

しかし、日本では前述の法律やシステムの未整備などから消防士・警察官・自衛隊員による災害現場での動物の救命措置は十分に組織化されていない。

例えば、火災や交通事故、自然災害現場で消防士や自衛官、警察官などが心肺停止の家庭動物(犬、猫、小動物)に目の前で遭遇し、一刻も早い救急救命処置を要する必要があっても、獣医は消防隊と同じタイミングで現場出動することはない。

また現状では、現場の消防隊員が無線で獣医師から動物の救急救命のための指示を受けたり、求めることもないため、家庭動物を火災現場内から屋外に救出できたとしても、心肺蘇生法や酸素投与を行うことができない。

瀕死の状態の家庭動物を発見後、消防指令センターなどから獣医を手配したとしても、獣医が現場に向かう間に家庭動物は救命処置が間に合わず死に至り、戻らぬ命となってしまう。

さらにその惨事の一部始終に遭遇した消防士が「家庭動物を助けてあげられなかったこと」を悔やみ、また、自分が飼っているペットと感情を重ね合わせてしまい、惨事ストレスになることさえある。

火災現場から飼い主は助けることができても、一酸化炭素中毒などで心肺停止したペットを現場で救命救急法を施して助けられないのは、人道的にいかがだろうか? 動物愛護の精神に反しないのだろうか?

災害時は平常時とは明らかに異なるため、事前に火災や交通事故をはじめ、災害時における家庭動物の救急救命についてのプロトコルを作成しておき、心肺蘇生法、人工呼吸、保温、止血などを許可すべきだと思う。

そこで、環境省、総務省消防庁、厚生労働省の担当者、獣医師会の先生方に日本国における消防士・警察官・自衛隊員による災害現場での動物の救命措置について、その問題点の洗い出しや解決策について見解を踏まえた取り組みを進めていく必要があると思う。

「通常災害(火災や交通事故など)と自然災害時における被災動物(犬および猫などの小動物)の救命救急処置に関する在り方検討会」を開催し、飼い主はもちろん、現場に居合わせた人、災害対応関係機関や団体など、全ての人々が救命救急処置を行えるような具体的な法整備と仕組みが必要だろう。