中国で新型ウイルス肺炎拡大 武漢の高速道路で検査(写真:アフロ/AP)

感染拡大を続ける新型コロナウイルス。国内企業はどう対応すればいいのか。ミネルヴァベリタス株式会社顧問の本田茂樹氏に寄稿をいただいた。なお、本稿は、2020年1月22日現在の情報に基づいて執筆していただいたものである。

1.はじめに:コロナウイルスの特徴

新型コロナウイルスによるとみられる肺炎の流行が、中国湖北省武漢市を中心に拡大しています。タイ、日本、そして韓国や米国でも、中国に渡航歴のある感染者が報告される中、中国国家衛生健康委員会が、「ウイルスが変異する可能性があり、さらに拡散するリスクがある」と発表するなど、さらなる感染の拡大が懸念されています。

コロナウイルスはヒトや動物の間で広く感染症を引き起こすウイルスですが、主に呼吸器や消化器に影響を及ぼします。過去に流行して多く死傷者を出したSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)もコロナウイルスの一種ですが、今回のウイルスは異なる種類であるといわれています。

新型コロナウイルスによる肺炎の感染経路や重症度については、今後の調査を待たねばなりませんが、本稿では、今後起こり得る新たな感染症の流行に備えて、企業が危機管理の観点から押さえておくべきことを考えます。

2.企業の感染症対策:予防の徹底と感染疑い者への対応

(1)感染症を正しく理解し、正しく恐れる
2012年から流行したMERSにおいては、「790人の関連死亡者があり、その致死率は35.6%である(2018年5月末)」とWHO(世界保健機関)が発表しており、その致死率だけを聞くとパニックに陥りかねません。

しかし、MERSに関する次の知識を持っていれば、冷静に対応することが可能です。

【予防法】
MERSの発生が報告されている地域(主に中東)では、咳やくしゃみなどの症状がある人との接触を避け、また動物(ヒトコブラクダを含む)との接触は可能な限り避けることが重要です。

【ヒトからヒトへの感染】
ヒトからヒトへの感染例は報告されていますが、飛沫感染する季節性インフルエンザと比較しても感染力は弱く、次々にヒトからヒトへと感染することはありません。
(厚生労働省「中東呼吸器症候群(MERS)に関するQ&A」をもとに筆者作成)

企業は、新たな感染症をいたずらに恐れるのではなく、正しい知識に基づいて準備を進めることが重要です。

(2)公衆衛生の基本を徹底する
新型コロナウイルスには、感染を防ぐワクチンも、また治療のための抗ウイルス薬もありません。このため予防することが極めて重要となります。

企業は公衆衛生の観点から、次に示す基本的な感染防止対策を自社の従業員に啓発しておくことを求められます。

●栄養と睡眠を十分にとり、抵抗力を高める
● 外出する際は、ラッシュの時間帯を避けるなど人混みに近づかない
●人が多く集まる場所から帰ってきたときは、手洗い・うがいを行う
●アルコール性手指消毒剤を使用する
●症状(咳やくしゃみ)のある人には、できるだけ近づかない
●手で顔を触らない(接触感染を避けるため)
●自分に咳やくしゃみの症状がある場合は、マスク着用(注1)・咳エチケットを心掛ける
●38度以上の発熱、全身倦怠感などの症状があれば、出社しない など

(注1)不織布製のマスクの着用によって、他者からの飛沫感染を完全に防ぐことは難しいとされていますが、自分の鼻やのどの保湿効果があると考えられます。

(3)感染防止対策は実践できてこそ意味がある
感染防止対策に関する知識を持っていても、企業内でそれが実践されなければ効果はありません。例えば、発熱や咳・くしゃみなど感染症の症状があるにもかかわらず、会社に出てくる従業員がいれば、そこから社内に感染が拡大します。

従業員一人ひとりが、感染防止対策を的確に実践できるまで、社内の防災教育などで繰り返し周知徹底することが重要です。

(4)新型コロナウイルスの感染疑いが発生した場合
今回の新型コロナウイルスの流行が拡大し、武漢市滞在歴がある社員に感染疑いが出た場合は、どうすればよいでしょうか。

咳や発熱の症状がみられるときは、マスクを着用するなどし、必ず事前に医療機関に連絡した上で受診します。また、受診の際は、武漢市の滞在歴があることを事前に伝えましょう。

なお、今後、新型コロナウイルスの病原性や重症度が明らかになるにつれ、これらの対応についても変更があり得ますから、最新の情報を確認することが大切です。

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