全国に広がる住民参加ワークショップ「逃げ地図」
埼玉県秩父市が地区防災計画に導入
![中澤 幸介](/mwimgs/1/2/-/img_120502e1330de879d2ce83a5a9250d1a26803.jpg)
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
2017/02/06
防災・危機管理ニュース
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
津波から高台などへ避難する経路と所要時間を一目でわかる「逃げ地図」づくりが、住民参加型の防災ワークショップとして沿岸部だけでなく山間地にも広がりはじめている。埼玉県秩父市では、逃げ地図づくりを土砂災害に応用し、その成果を住民主体の地区防災計画(※)に反映させるなど、新たな試みが進められている。
逃げ地図は東日本大震災の後、日建設計の若手社員たちによって開発されたもので、高台などの避難目標地点までの経路とその所要時間をワークショップ形式で話し合いながら地図上に色塗りをして作る。地図の作成が目的ではなく、地図づくりを通じて、さまざまな気付きが得られるというのが最大の特長だ。すでに北は岩手県から南は高知県まで全国各地で使われはじめているが、これまでは津波災害への備えとして、主に沿岸部の地域でのみ取り入れられてきた。
こうした中、住民参加型のまちづくりワークショップを展開する明治大学理工学部建築学科教授の山本俊哉氏、千葉大学大学院園芸学研究科教授の木下勇氏らが中心となり、逃げ地図を多様な災害に応用する研究を進めてきた。その一環として、埼玉県秩父市では、逃げ地図による土砂災害を想定した避難計画づくりが行われており、近く久那地区で住民が主体となって策定する地区防災計画にその活動の成果が盛り込まれる見通しになった。
自宅から避難所までの所要時間や危険箇所がわかる
逃げ地図は、2000~2500分の1程度の地図と12色以上の色鉛筆と紐(ひも)さえあれば、どこでも誰でも作成することができる。
5~7cmほどの短い切れ端の紐を、足腰の弱い高齢者が3分間で移動する歩行距離(平均129m)を図る物差しとして、この紐を地図にあて、避難目標地点を起点にした避難経路に、3分間までは緑色、3~6分間は黄緑色、6~9分間は黄色、9~12分間は橙色というように色塗りしていく。自宅から避難場所までどのくらいの時間がかかるかが一目でわかる仕組みだ。
建物の倒壊や崖崩れなどで通行不能になる恐れのある道路や橋梁などは×印をつけて、回避経路も記す。一通り塗り終わった後、避難経路に避難方向を示す矢印(→印)をつける。
陸前高田市米崎地区のワークショップで作成された津波からの逃げ地図(写真提供:明治大学 山本教授)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方