2017/02/14
防災・危機管理ニュース
厚木市や久留米市で高い効果
こうしたセーフコミュニティの取り組みによる成果を積極的に公表している自治体もある。厚木市では、市内での交通事故の減少に向けて、小学生や高齢者を対象とした交通安全教室や自転車用ヘルメットの着用運動、自転車利用のマナーキャンペーンなどの取り組みを実施。セーフコミュニティに取り組む前の2007年から2015年までに46.3%も事故件数が減少したとしている。防犯対策においては、治安が悪いと感じられている本厚木駅周辺でのパトロール活動や青色回転灯搭載車によるパトロールの実施により犯罪件数(刑法犯認知件数)は41.1%減少。市民の意識についても、治安が悪くなったと感じる人は2007年から43.8%も減少し、逆に、良くなったと感じている人が10.7%ポイント増加した。その他、高齢者の転倒による外傷も10ポイント程度減少している。
福岡県久留米市でも、交通事故がセーフコミュニティへの取り組み前後(2011年~2014年)で9.8%減少。市内における学校の安全対策のモデル校ではケガの発生件数が43.2%減少(〃)、犯罪の認知件数は26.1%減少、防災の取り組みは自主防災訓練の参加者が2.3倍に増加するなど高い効果を出している。
安全な取り組みは、観光客や居住者へのPRになるだけでなく、産業誘致をする上でも大きなプラス材料になる。「国際的な友好都市との交流が積極的になっている地区もある」と白石氏は語る。
セーフコミュニティ認証のための指標
セーフコミュニティの認証を取得するためには、7つの指標を満たす必要がある。
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指標1.分野の垣根を超えた協働を基盤とした推進組織を設置する
指標2.両性・全年齢、あらゆる環境・状況をカバーする長期プログラムを継続的に実践する
指標3.ハイリスクの集団・環境および弱者を対象にしたプログラムを実施する
指標4.根拠に基づいた取り組みを実施する
指標5.外傷が発生する頻度とその原因を記録するプログラムを実施する
指標6.プログラムの内容・実施行程・影響をアセスメントするための評価基準を設定する
指標7.国内外のSCネットワークへ継続的に参加する
指標1の分野の垣根を超えた協働では、例えば、警察と消防、自治体防災担当など各分野での安全を推進する組織が協働するということ。指標2では、すべての住民を対象にしたプログラムを構築してPDCAサイクルを回すということ。指標3は、高齢者の事故が多いコミュニティなら高齢者向けのプログラムを実施するなど、リスクが高い人々・環境にフォーカスするということ。例えば、年齢別・要因別に外傷や事故件数を分析することでリスクが高い部分を明確にすることができる。

指標4は、すべての事故や外傷、災害による人的被害のデータを分析することでケガや事故などの根拠を得る必要がある。そのためには緊急搬送や交通事故のデータを分析し、どこで、どのような被害が多く発生しているかを明らかにする必要がある。指標5・6は、その文章どおり、日常的な事故や災害の発生要因を調べて記録すること、プログラムの効果を評価し改善していくことを求めている。
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